戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

共謀罪「急いては事を仕損じる」ぞ 17/06/15

明日へのうたより転載

 「急いては事を仕損じる」「慌てる乞食はもらいが少ない」「急がば回れ」「そのスピードが死を招く」「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」――急ぎ過ぎを戒めることわざや惹句は多い。ところが「モリ」と「カケ」で追いつめられた安倍政権はそんなことわざに構ってはいられないらしい。

 本15日午前7時30分過ぎ、共謀罪法案が委員会省略という新手を使って強行成立した。『毎日』は15日付朝刊1面で「立法府の劣化深刻」と平田政治部編集委員名で政権のやり方を批判。「長期政権のおごりと、それをただすべき立法府の劣化が日本の民主主義に禍根を残した」。

 同日付『赤旗』によれば、昨夜から今朝にかけて国会周辺はもちろん全国会地で「共謀罪採決を許すな」の声が唱和したという。おれも腰が痛くなければ参加したかったな。1989年に総評が解体してから、日本の大衆運動はずっと沈滞していた。数万人規模の政治的な集会・デモは絶滅したかに思えた。

 それが復活したのはあの福島・原発事故が契機だ。2011年9月19日、代々木公園を埋めた7万人の人波の中でおれは感激に震えたね。日本の民衆は沈黙を脱して「さよなら原発」の声を上げたのだ。この日の集会は大江健三郎、澤地久枝さんら個人の呼びかけだったが、それが組織化され、翌12年7月16日の代々木公園17万人集会・デモに引き継がれた。若者の参加が目立ってきたのはこの頃からだ。

 それからは特定秘密保護法、戦争法、沖縄辺野古基地などに反対する大衆運動が日に日に大きく膨れ上がった。運動の特長は「法案が強行されても諦めない」こと。おれたちの若い頃の大衆運動は、例えば60年や70年安保闘争のように政府権力に負けるとすぐ挫折感にとわれてへこたれた。そこが違う。

 秘密保護法でも、戦争法でも権力側が無理を通して強行すればするほど新しい運動が起こり、新しい人たちが参加、新しい組織がつくられる。今度の共謀罪反対闘争でも、戦争法当時のシールズの精神を引き継いだ「未来のための公共」(未来公共)という若者組織が大活躍した。凄いことだ。

 だからこそ政権側は大衆行動を封じ込める策謀にのめりこむ。今回の共謀罪強行はその最たるものだ。法案成立によってたたかいは新たな段階になるが、日本の大衆運動がさらに強大になる展望が見えている気がする。