戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

沖縄の反基地運動を「犬畜生」のように弾圧 17/05/14

明日へのうたより転載

 『週刊金曜日』5月12日号に佐高信(72)、山城博治(64)、照屋寛徳(71)の鼎談が載っている。山城さんは1952年生まれ、法政大学卒、82年に沖縄県庁に入庁、08年に退職、その後は反基地運動に専念という経歴。昨年10月に威力業務妨害で逮捕され、152日間も拘留されていた。

 山城さんは言う。「正直に申しますと、沖縄県警と私たちはうまく調整しながらやっていました。毎日、機動隊の責任者とは『逮捕者もけが人も出さないでおこうな』『こっちはちゃんと仕切るからな』というような言葉を交わしあっていた」。それが東京から警視庁が入ってきて強硬路線に一変した。

 おれはこの部分を読んで45年前のある情景を思い出した。その頃おれは新聞労連東京地連の専従書記長。日比谷公園から東京駅の鍛冶橋まで歩く地連独自の春闘デモを企画した。副委員長の安塚正敏さんとデモ申請に桜田門の警視庁本庁へ行った。コースが丸の内警察と築地警察両管内にまたがるためだ。

 当時沖縄返還デモが激しく行われ、逮捕者やけが人が出ていた。おれたちはデモが規制されるのではないかと緊張しながら受付で来意を告げた。予想に反して応接室に通されお茶が出るという和やかな応対。私服の公安係が入室して丁寧に名刺を出し「ご苦労さん」と頭を下げた。デモの申請はすらすら運んだが「うまく仕切ってください。新聞の部隊は沖縄返還デモでも目立っていますから」と釘を刺された。

 警察権力の本質はやはり冷酷無残なのだと思う。和やかな応対に見えて実は衣の下に鎧を隠している。山城さんはそれを実感させられた。それが下記の山城さんの述懐部分だ。

 「(拘留が長くなると髭がもじゃもじゃ、痩せてきて目つきも変わってくる)今思い返すと印象操作だったと思うんですが、取り調べで、名護署から裁判所や検察に移動する時の私の格好はと言えば、裸足にゴム草履、手錠をされ、さらに腰に縄をつけられた状態なんです」「まるで犬畜生みたいにね」「極悪非道の犯罪者であるという印象を周囲に植え付けようとしていたんでしょうね」。

 この情景はまさに戦前の治安維持法の世界である。いま国会では「共謀罪」の審議が大詰めに来たと報道されている。国家権力に反抗する運動を「犬畜生」のように弾圧し世間の晒し者にする。そんな時代の再来だけは止めさせなければならない。