戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

35年前を思い出させるトランプのビザ規制 17/04/05

明日へのうたより転載

 本5日付『毎日』夕刊1面中段の囲み記事。「米ビザ審査強化 日欧も対象」「トランプ政権検討」。トランプ大統領がアメリカ入国のビザ申請に際し、携帯電話を提出させ、通話履歴などからテロ組織とのつながりを調べることを検討しており、その対象に日本や欧州も含まれるというのだ。

 この記事を読んで35年前のある事件を思い出した。1982年、当時の米大統領は就任2年目のレーガンだった。民主党のカ―タ―を引きずり降ろしたタカ派大統領だ。この年の6月、ニューヨークで国連軍縮総会が開かれることになった。日本からも各団体が大量に代表団を送り込む運動が盛り上がった。

 新聞労連は81年11月に「第1回平和問題全国集会」を開き、反核平和運動に職場から参加していく方針を固めた。82年になって、3・21広島集会、5・15沖縄集会、5・23東京集会とせり上がって最後が6月7日からの第2回国連軍縮総会だった。新聞労連の代表団は井川団長(地連書記長)をはじめ20人。マスコミ代表41人の半数を占めた。ところがいざニューヨークへ行くまでが大変だった。

 5月初めに各代表団はアメリカ渡航のビザを申請したが、総評などのビザはすんなり発行されたのに東京原水協と平和委員会の約200人は認められなかった。レーガン政権は日本共産党員は入国させないという。それにマスコミ代表団もひっかかった。さんざん揉めたあげく渡航寸前にビザはおりたが、原水協や平和委員会などは会議参加を断念した。マスコミ関係も全員共産党員でないとの誓約をさせられた。

 「出版労働者が歩いてきた道」によれば「(出版労連代表の7人は)アメリカ政府によるビザ発給停止の妨害のため出発を遅らせられたが、6月5日、マスコミ文化共闘代表団として出発した。東京原水協代表団などが、ニューヨーク行きを断念してヨーロッパに向かったため、マスコミ文化共闘の役割は重大となった」のである。

 その後日本共産党の幹部もアメリカに行けるようになった。現に今年の3月27日からニューヨークで開かれた「核兵器全面廃絶につながる、核兵器を禁止する法的拘束力のある協定について交渉する国連会議」という長い名前の会議に日本共産党の志位和夫委員長ら幹部が出席している。

 歴史は繰り返すといわれるが、今回のトランプ大統領のビザ規制は35年も歴史を後戻りさせることにならないだろうか。