戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)米国で裁かれる原発事故「トモダチ作戦」 17/01/22

明日へのうた]より転載

 「週刊金曜日」1月20日号の「被爆兵士の裁判は米国で実施か」という記事が興味深い。書いたのはアメリカ在住のジャーナリスト、エィミー・ツジモトさん。東日本大震災の「トモダチ作戦」に従事した米軍兵士らが原発事故の影響で放射能被曝したとして東電やGMなどを訴えている裁判の管轄権問題だ。

 原告の兵士らはサンディエゴ連邦地裁に提訴したが、被告の東電は日本での裁判を主張。地裁は「米国での裁判進行」の判断を示したが、東電は上級審のパサデナ連邦高裁に不服を申し立てた。「法定助言人」の日本政府も東電主張を支持する意見陳述をした。高裁は米国政府に判断を仰いだ。

 そして昨年12月19日、米国政府は「日本でなくても正当な裁判は受けられ、そのことによって日米の親善関係に亀裂が入ることはない」として地裁の判断を支持する見解を発表した。高裁は近々日本政府や東電の不服申し立てを却下すると考えられている。日本側は米国での裁判に追い込まれることになる。

 するとどうなるか。エィミーさんは言う。「フクシマ事故から6年にして、当時の『真相』がようやく明らかになろうとしている」「米国で裁判が開廷した暁には、訴訟手続きの『ディスカバリー』(証拠及び情報開示制度)によって、未だ明らかにされていない事実が見えてくるだろう。これまで『真相』を公表せずに逃げ切れると考えていた東電や日本政府は、ついに米国で幾多の情報開示を迫られることになる」。

 日本では十分にできなかった原発事故の真相究明が、アメリカの司法によって実現する可能性が出てきた。そればかりではない。「兵士たちの様々な病状が『トモダチ作戦』の参加によってもたらされた結果と認められた場合、今なお低線量被曝による健康被害を認めない日本政府の立場も大きく崩れていくだろう」というエィミーさんの指摘の意味は重い。まさに世界的な関心事と言えるだろう。

 それにしてもこんな重大なニュースが、何故日本のメディアで取り上げられないのだろう。原発事故被害の裁判は福島をはじめ各地で起こされている。おれもそれらの裁判の一つ「福島原発告訴団」の原告の1人である。だが正直言って原発事故への関心は日々薄れている感じがする。

 放射能汚染は人類の未来への赤信号だ。おれも含め、日本人全ての頭の切り替えが必要な気がする。