戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)海外旅行・ポーランド、ハンガリー(2003年)④ 16/12/20

明日へのうた]より転載

 ちょっと時間が遡るが、ブダペストからトカイへ行くバスの中でのジョルジュさんとガールさんの話が面白かった。話を聞いたおれの感想がテープに残っている。

 《共産党政権が変わって自由な国になったけどそれはそれで大変なようです。ハンガリーで活動する合弁企業は最初の5年間は無税です。その合弁企業が倒産する。国外に逃げるか新しい名前になるか。ここで働いていた労働者が失業者になってこれも逃げる。共産党時代は資本主義になれば自由になる。チャンスがあればお金持ちになれると思っていたんだけれど、そうはなかなかいかない。幻想だったということが分かってきて、資本主義の大変さが身にしみているようです。ガ―ルさんも2年前よりはずいぶん思想傾向がリアルになってきているように思えます。共産党は憎むけど人は憎まないと言っています》。

 エゲルには21日と22日の2泊した。22日、世界文化遺産の大平原ホルトバージュへ行った。広々とした観光牧場である。馬車に乗って牧場を一周。牛がのんびり寝そべっていた。馬に曲乗りする観光客向けのカウボーイの芸。素朴なレストランで食べたビーフステーキが美味かった。それとワインも。

 エゲルにはトルコとの古戦場で有名なエゲル城がある。バスを降りてからかなり坂道を上る。城の入り口の石門にトルコ軍撃退を描いた銅版画が埋め込まれている。その前で記念写真。トルコ軍はハプスブルクが追い払ったが、そのハプスブルグによって1702年、エゲル城は爆破で破壊された。今残っているのはお城の残骸。見物は疲れるだけなので、おれは街に残っておみやげ屋でビールを飲んでいた。

 最後の宿泊地はエステルゴム。ドナウ川を隔ててクロアチアと接する国境の町だ。ハンガリー発祥の地といわれ、建国以来政権争いの舞台となったところ。高台にある丸い屋根はカトリック総本山の教会の大聖堂。大きいには大きいがそれだけの話で、特に感激するほどのことはない。

 24日早朝バスでブダペストに戻り、10:40発でアムステルダムへ。そこで乗り継いで機中泊。翌朝8:45に成田に着いた。この旅行で一緒だった細見さんは3年後の06年5月にガンで亡くなった。ジョルジュさんも井川君も横田さんも今はいない。ハンガリーもあれから13年、EUに入ったが、経済的にも政治的にも厳しいようだ。ガイドしてくれた写真家のガールさんは今どうしているだろう。