戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)TPP路線を走るメディアと連合 16/12/17

明日へのうた]より転載

 TPP承認案と関連法案が9日の参院本会議で、自公と与党補完政党の賛成で可決成立した。TPPはすでに衆議院を通っているのだから無理しなくても自然成立の見通しだった。しかも、TPP参加の超大国アメリカがトランプ出現で批准不能が確定している。なんぼ強行好きの安倍さんでもちょっとやり過ぎとちゃうか。

 安倍首相は、発効絶望のTPPを何故無理やり強行するのかと問われて「日本がTPP並みの高いレベルのルールをいつでも締結する意思があることを示すためだ」と強弁する。誰に対して「意思を示す」のか。はっきりしている。アメリカである。これからトランプ相手に2国間協議をやろうというわけだ。

 恐れ入ったことにこの安倍首相の姿勢をそのまま受け入れているのが日本の大手メディアなのだ。「保護主義を唱えるトランプ次期大統領が離脱を明言し、発効は困難な情勢だ。しかし、日本として自由貿易を推進する姿勢が変わらないと示したことに意義がある」(11日付『毎日』社説)。

 「12カ国が参加するTPPは貿易や投資で高水準の自由化を図る。アジア太平洋地域の包括的な通商ルールとなり、域内全体の成長に資する」。これが『毎日』のTPPに対する基本スタンスだ。この基本を通すためなら「農業関係の不安」や「医療保険」「著作権」「ISD条項」の疑問点にも目をつむる。

 さらに酷いのは労働組合の連合だ。「連合は、わが国経済を持続的・安定的な成長軌道に乗せ、雇用の創出・維持をはかる上で、とりわけ成長性の高いアジア太平洋地域との経済連携体制の構築は重要であると認識し、TPPはその第一歩になり得るものと受け止めてきた」(逢見事務局長談話)。

 このような基本スタンスの下に連合は「引き続き、TPPがわが国の持続的成長と雇用創出はもとより、アジア太平洋地域における公正で持続可能な発展とディーセント・ワークの実現に寄与するものとなるよう、民進党や国際労働組合総連合(ITUC)などの関係組織と連携をはかりながら、政府に対し必要な対応を求めていく」という。TPP路線を走るトップランナーの心意気だ。

 プーチン大統領を日本に呼んで行った日ロ会談もさしたる進展なし。アベノミクスはますます混迷を極め、これで株の暴落でも起こったらどうなる。頼りはカジノだけとは情けない。『毎日』と連合に忠告したい。TPPにすがりつく安倍首相と一蓮托生で野垂れ死にだけはしないでほしい。