戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員ますます固まる沖縄新基地絶対阻止 16/09/17

明日へのうた]より転載

 福岡高裁那覇支部の多見谷寿郎裁判長は16日、翁長知事の辺野古新基地承認取り消しを違法と断定した判決を言い渡した。この裁判を国が提起したのが今年7月22日、わずか2ヵ月足らずの審理期間。異例の速さであり、いま沖縄・高江で行われている凶暴な住民弾圧と軌を一にする不当判決である。

 国と沖縄県の辺野古新基地をめぐる争いの経過を見てみよう。14年11月16日の知事選で翁長知事が圧勝。15年10月13日、前知事が行った辺野古新基地建設のための宜野湾埋め立て承認措置を取り消した。これに対して国は11月17日、埋め立て強行を可能にする代執行を提起する。その提起先が福岡高裁那覇支部であり、担当が多見谷裁判官だったのだ。年齢は分からないが多分若いのだろう。

 この多見谷裁判長が言い出したのが「国と県との対等な話し合いによる解決」という和解である。いろいろ問題があったが、翁長知事も話し合い解決を決断してこの和解勧告をのんだ。国も和解に応じて代執行訴訟を取り下げた。さあこれで話し合いが始まるのかな、と期待したが国は事実上協議を拒否する。

 国は和解成立の4日後、今年3月7日に翁長知事に対し「埋め立て承認取り消しの撤回」を求めて是正指示を出す。話し合いでなく、指示・命令によって埋め立てを強行する構えである。そんなやり方に降参するわけにはいかない。県は国地方係争処理委員会に「国の指示」の適否を問い質した。ところが係争処理委員会は6月17日、適否を判断せずに無責任にも審査終了としてしまう。

 国は係争処理委員会の審査終了を待っていたかのように「国の是正指示に従わない知事は違法」という理由で「違法確認裁判」を福岡高裁那覇支部に提訴、それが7月22日。担当裁判官は前の裁判で和解を勧告した多見谷判事だというわけだ。普通自分がまとめた和解だから、それが実行されたのか、話し合い解決の努力がなされたのかを検証すべきなのに彼はそんな忖度は一切しない。判決へ一直線だ。

 彼はもっぱら仲井真前知事の埋め立て承認措置が適法か違法かを判断。「適法」ならそれを取り消した翁長知事の措置は「違法」だというわけだ。こんな論法で沖縄県の苦悩が分かるわけがない。

 労働委員会はもちろん普通の民事訴訟でも、一度和解で訴訟当事者が合意したなら同じ内容の訴訟を提起してもその取扱いには慎重になるのが常識だ。今回の多見谷裁判官のような拙速で無責任な態度は許されない。それとも最初から国側と示し合わせた「デキレース」だったのか。いずれにしても翁長知事は「絶対に辺野古基地は造らせない」と決意は固い。沖縄県民とともにこの決意を断固支持する。