戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)麻生太郎の放言に思う 16/09/01

明日へのうた]より転載

 「『証券会社、ほぼ詐欺』麻生氏放言」(8月31日付『毎日』)。麻生太郎副総理兼財務・金融担当相が「なんとなく債権、株に投資するのは危ないという思い込みがある。あれは正しい。われわれの同級生で証券会社に勤めているのはよほどやばいやつだった」と講演の中で述べたという。

 麻生なにがしの同級生にはどうやら「やばいやつ」や「詐欺一歩前みたいなことをやる」人物がいるらしい。そのこと自体は「そんなこともあるだろうな」程度の感想で驚かない。問題は「債権」や「株」を「危ない」との「思い込み」は「正しい」と肯定している点だ。麻生太郎は株式投資を否定していることになる。

 その「やばくて危ない」株式に国民の貴重な年金積立金を投資しているのは一体誰なのか。あんたが主要ポストを務める安倍内閣ではないか。あんたは閣議で一度でも「株への投資はやばいからやめるべきだ」と言ったことがあるのか。5兆円もの損失を出してもまだ株に注ぎ込もうとしているのではないか。

 同日付の『毎日』の「医療・福祉」面を見ておれはさらに腹が立ったね。「個人型確定拠出年金」「公務員や専業主婦に対象拡大」「メリットは税優遇 デメリットは運用リスク」「公的年金縮小 自助努力促す」。要するに公的年金の国の負担を減らすために自分で積み立てる拠出制年金(日本版401k)を奨励、しかもその運用は個人任せで元金がスッカラカンになっても自己責任というわけなのだ。

 『毎日』の解説記事によれば「確定拠出型では、拠出した掛け金が加入者の財産として確定したに過ぎず、受取額は加入者の運用次第で変わってくる」となっている。自分の人生をギャンブルの世界にゆだねることになる。そんな危なっかしい制度を国が奨励するのを麻生太郎は止めようともしない。

 今の資本主義がギャンブル資本主義だと指摘されてだいぶ経つ。アベノミクスはその最たるものだ。今回の麻生放言は、アベノミクス陣営内の内部矛盾が露呈したものとの見方もできる。それにしても、証券業界の制度的問題点を棚上げにしてそこで働く人たちをコケにした麻生太郎の放言は酷いものだ。

 戦争に向かって突っ走る安倍政権も困ったものだが、国民の生活を塗炭の苦しみに陥れるアベノミクスも絶対ストップさせなければならない。ルールある経済社会を目指すたたかいが急務になっている。