戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)革新チームの体力づくりが課題 16/08/03

明日へのうた]より転載

  「打線も好機で決定打を欠いた」。負け試合を評する野球記事の常とう句である。決定打があれば勝てたのに相手投手に抑えられてしまった。ま、そこが野球の面白味であり怖さでもある。いや野球ばかりではあるまい。いろんな社会現象に通じるのではないかな。たとえば今回の都知事選のように・・・。

 今回の都知事選、17年ぶりに革新都政を奪還する絶好のチャンスだった。自公が推した知事が相次いで途中退場。保守陣営は分裂。この連続敵失でチャンスが訪れた。しかも味方は野党共闘で補強された。ノーアウト満塁。バッターボックスに立ったのは好打者の鳥越俊太郎氏。一発出れば逆転勝利だ。

 そこで相手投手が選んだのは直球勝負でなく、ボークまがいの変化球。デマ、個人中傷、なんでもあり。しかも自分は「政党に見放された哀れなヒロイン」気どり。鳥越支持の観客を自分の方へ獲りこんだ。「劇場化戦略実る」「『1人の戦い』浸透」「政党の敗北 鮮明に」(8月1日付『毎日』)。

 究極の「争点隠し」である。「争点逸(そ)らし」と言ってもいい。徹底して直球勝負を避けたのである。その結果どうなったか。毎日新聞が行った出口調査が如実に物語る。小池百合子の支持政党別得票率は、自民党支持者の52%、公明党支持者の23%、民進党支持者の39%、共産党支持者の17%、支持政党なしの51%である。これは選挙公示日直後の世論調査の数字を大きく上回っている。

 「鳥越氏は知名度の高さから、選挙戦序盤の毎日新聞の世論調査で40代以上の支持が男女ともに3割前後あった。しかし、過去に女性関係の疑惑があったと週刊文春が21日に報道すると、直後の23、24日の世論調査で、30~50代の女性の支持が1~2割に下がった。出口調査では1割台と低迷した」(『毎日』)。

 折角の好機に決定打を打てなかった鳥越陣営にとって今後の課題はなんだろう。どんな変化球にも対応できる打法を磨くというのは当然である。しかし「打法」というテクニック問題にだけ矮小化するのは間違いだろう。要はチーム全体の団結のレベルアップをどうつくっていくのかということだと思う。

 おれは67年、71年、75年の3回の美濃部選挙に労働組合の立場から関わったが、今回の選挙では全労連、東京地評も含め組合の姿がなかなか見えなかった。連合東京は早々と戦線離脱だ。その辺をどう構築し直すが、革新チームの体力をつけるための必須条件だと思うのだが。