戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)韓国労総の10万人一斉ストに思う 16/07/26

明日へのうた]より転載

 この暑いさなか韓国の労働組合ががんばっている。ネットに配信されたハンギョレ新聞から抜粋する。まず写真が凄い。説明文「20日午後、汝矣島の産業銀行前で民主労総の組合員1万人が出席したなか開かれた『一斉スト 総力闘争』首都圏大会で参加者がスローガンを叫んでいる」。

 「全国民主労働組合総連合(民主労総)が20日、政府が推進中の労働改革と成果年俸制に反対する大規模な屋外集会を開いた。蔚山(ウルサン)では現代自動車と現代重工業の労働者6万人余りが23年ふりに同時ストライキを行った」。現代自動車と現代重工業と言えば韓国産業の中枢だ。そこで6万人が結集するストだというから、日本の労働組合の現状から考えると目のくらむような話だ。

 「民主労総は20日午後、ソウル・汝矣島(ヨイド)の産業銀行前で『労働改悪・成果退出制度廃止、労働基本権保障、ハン・サンギュン民主労総委員長釈放』を掲げ、首都圏一斉ストライキ総力闘争集会を開き1万人余りが参加した。民主労総のチェ・ジョンジン委員長職務代行は、大会辞を通じて『我々の闘争を非正社員の現実を無視した闘争と罵倒する者がいるが、非正社員を大量解雇と死に追い込んでいるのは政権と資本』とし『一斉ストライキは朴槿恵(パククネ)政権の不正を阻む正当な闘争』と主張した。。

 事情がよく分からないので推測だが、こういうことが言えるのではないか。今回の10万人余を結集した韓国のストは「労働改悪、成果年俸制(成果退出制)の廃止」を求めたものといえるだろう。ここで言われている成果年俸制と成果退出制が同じものかどうか分からないが、いずれにしても日本の成果型賃金の系譜のようだ。賃金を時間や労働密度などの客観的物差しでなく、使用者の恣意にゆだねるということだ。

 「ハン・サンギュン民主労総委員長釈放」との要求には驚いた。スト決行の民主労総の最高幹部が逮捕されているというわけだ。韓国ではストで被害を被ったとしてしばしば組合幹部を逮捕する。組合に多額の損害賠償を請求することもしょっちゅうだ。それでも弾圧にめげずにストをぶつ根性が素晴らしい。

 秋には公共輸送、鉄道、エネルギー産業の民営化反対がたたかわれる。9月27日からは、鉄道、地下鉄の組合が無期限一斉ストに入ると予告している。韓国労組のいずれの要求も日本と共通している。ダメなものはダメとストに訴える韓国と、組合の姿が見えない日本。どちらが開かれた国と言えるのだろう。