戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)野党共闘への連合の姿勢を憂慮する 16/07/15

明日へのうた]より転載

 自民圧勝を伝える今回参院選の中で「野党共闘」の健闘が注目されている。全国32の1人区で11の議席を獲得できた。前回2013年の選挙では野党は2議席だったのだからまずまずの成果と言えるだろう。なにしろ国政選挙で主要野党がきちんと協議して協力体制を組むなんて歴史上初めてのこと。関係者の苦労も大変だったと思う。その関係者の一つ労働組合の野党共闘の評価はどうなっているか。

 全労連「戦争法廃止を求める広範な市民と結んで、短期日に32の1人区すべてで『統一候補』を実現して追い上げ、11の1人区では勝利し、他の多くの選挙区でも接戦に持ち込んだ。市民と野党の共同の確かな可能性を示すものということができる。この選挙結果からも、切実な要求を基礎に市民と野党の共同をさらに前へ進め、太くしていくならば、力関係の大きな変化を実現することは可能と確信する」(井上久事務局長談話)

 連合「事実上野党候補を一本化した32の1人区において、接戦を勝ち抜いた選挙区が複数あったものの、保守基盤を崩すには至らず、取り組みの検証が必要である」(逸見直人事務局長談話)

 一般メディアの見方さえ否定する連合の後ろ向きの姿勢に驚く。第一に野党候補一本化は「事実上」などという偶然の産物ではない。関係者が血のにじむ努力をして実現した成果なのだ。第二に「取り組みの検証が必要である」とは何事か。今後の野党共闘に水をさそうというハラか。情けないとしか言いようがない。
  
  ちなみに市民連合は、全国32の1人区で野党統一・市民連合推薦の候補が11人当選したことを評価した上で「日本政治史上初めて、市民が主権者として連帯して野党の統一を促し、市民が政治を変える試みが実現したことの意義は大きいと思います。私たちは、この試みと限界から教訓を学び、安倍政権の下におけるだまし討ちのような改憲の動きに毅然と反対し、個人の尊厳を擁護する政治の実現をめざして、ひきつづき安保法制の廃止と立憲主義の回復を求めてまいります」と高らかに宣言している。

 連合にはこの市民の声が耳に入らないのだろうか。連合東京は都知事選でも野党統一の鳥越俊太郎候補を推薦しないという。そんなことをしていたら市民にそっぽを向かれるだけでなく、組合員からも総スカンされる日がそう遠くなく来るだろう。労働組合は社会進歩にとって欠かせない組織だと思う。今からでも遅くないから、連合自体が「取り組みの検証」をすべき時だとおれは思う。