戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)JR争議の政治決着に思う10/02/25
今日の毎日朝刊に「与党と公明 JR不採用解決案」「270億円支払い230人採用」という記事。民主、社民、国民新党の与党三党と公明党の担当者会議で23日にまとめたJR解雇争議解決案である。JR分割民営化にともなう23年間に及ぶ「戦後最大の労働問題」が大詰めを迎えている。
23年前のこととなると新聞社も正確な事実を掴んでいないらしく、この記事でも「国労の組合員ら1046人がJRに採用されず・・・」となっている。国鉄解体にあたってJRに採用されず、国鉄精算事業団に送られたのは、国労調査で6793人いる(そのうち80%が国労、全動労の組合員)これらのうち最後まで事業団に残り、3年後にその事業団からも首切られたのが1046人なのだ。
たとえ採用されても、国労、全動労の組合員は「要員機動センター」に配属され、清掃作業や直営売店の仕事をさせられて、本来の運転手や車掌、車両検査などの仕事は取り上られた。本来業務に残れた少数の国労・全動労組合員には「意識改革」と称する転向工作が激しく行われた。これがJR事件の総体なのだ。
国鉄が民営化されれば労働者に当然スト権を与えなければならない。支配者が一番心配したのはその点だつたのだと思う。どうしたらストをしない労働組合にすることができるか。そこで考えたのが「アメとムチ」の攻撃である。「過激派」の動労と手を結び雇用を保証。一方、たたかいを放棄しない国労、全動労などには徹底した組合潰しの不当労働行為。「分割民営反対」で踏ん張った国労だったが、組織に動揺をきたしてストライキを打つのは困難に追い込まれた。
おれは初期のJR争議に都労委の中にいてどっぷりはまりこんだ。いわゆる「JR不当労働行為事件」は都労委だけで87年からの10年間で97件、これは同期間の全事件の11%にあたる。都労委もそうだが、中労委をはじめ全国の労働委員会が一番頭を悩ませたのが「JRの不当労働行為責任認定方法」だ。「国鉄改革法」という法律に守られたJRをどう不当労働行為の主犯として引きずりだすか。様々な工夫をこらして国家的不当労働行為に立ち向かったのだが、結局は最高裁で否定されてしまった。
今回の政治的解決案でも「JRには責任がない」ことが前提になっている。日本という国は労働者の権利に関してはやはり後進国と言わざるを得ない気がする。