戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)トヨタ批判は米自動車労組の「陰謀」なのか10/02/15

[明日へのうた]より転載

 トヨタ自動車がアメリカでリコール騒ぎを起こし、米議会や消費者から袋叩きにあっている。去年の11月以来、「アクセルにフロアマットが引っかかり戻らなくなる恐れ」「アクセルペダルの部品の不具合」「ブレーキシステムのプログラムの不具合」などで、800万台を超える自主改修やリコールを行った。

 このままでは、アメリカ市場でのトヨタ車販売は深刻な打撃を受ける。ついに豊田章男社長自らが訪米して弁明することになったらしい。しかし、24日から開かれる米議会の公聴会ではトヨタ批判の急先鋒を務める議員らがいっせいにトヨタ叩きを強めることは確実。さらに苦しい立場に立たされそうだ。

 米メディアも「リコール問題の背景にはトヨタの根深い隠蔽体質がある」と、トヨタの経営体質そのものに追及の的を絞っている。日本でも最近、トヨタが販売の軸と考えているハイブリット車「プリウス」のリコールが発表されたが、トヨタ批判はアメリカほど大きくなっていない。

 この、アメリカにおける「トヨタ批判」の大きさを、「騒ぎすぎ」とか再建途上にあるGM車を売るために「UAW(全米自動車労組)がトヨタ騒ぎを大きく見せかけているだけ」ではないか、などの観測も広がっているようだ。UAWがどんな思惑で何をどう動いているかはあまり報道されていない。ただ、日本の新聞が、「トヨタ叩きの本質は日米の企業間競争だ」と書いていることは確かだし、そう言われると「なるほどそうかも知れない」と納得する日本人は多いのではないか。

 トヨタの「派遣切り」や「看板方式」といわれる下請け泣かせの部品納入システムなど、利潤追求のためには何でもするという経営体質が、今回の欠陥自動車騒ぎの根底にあることは確かだとおれは思う。安全な製品を要求する世論を、アメリカの労働組合の陰謀だなどと筋違いの理屈をこねまわしている段階ではないのではないか。

 とかく、日本では企業批判がタブー視される。労働組合が企業内にしか組織されていないことも影響していると思う。大企業労働運動が、ユニオンショップやチェックオフ、企業に「オンブにダッコ」の現状を卒業し、企業から独立した自主的な労働組合になっていくこと、それが企業民主化の一歩になるのではないか。