戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)デパート閉店 取りとめのない断想10/02/03
有楽町の西武デパートが閉店になるということで新聞でもテレビでも話題になっている。もう10年前になるが、同じく有楽町の「そごう」が閉店になってショックを受けたことを思い出した。そごうの場合は個別事情の放漫経営が原因だったが、今度の西武はデパート業界全体の地盤沈下現象の現れ。全国各地で有名デパートが姿を消し、地方経済に対する影響も深刻な様子だ。
おれが高校2年の春休み、なぜかお袋が東京へ1人で遊びに行かせてくれた。赤羽の親戚に泊まってあちこち都内を冒険して歩いた。ちょうど東京駅八重洲口に「大丸」ができた時だった。駅につながったデハートだから迷わずに行けるだろうと1人で出かけた。その大きさに圧倒されたね。屋上から都心のビル群が見渡せ、宮城がすぐ真下の感じ。しばらく声も出なかった。
もちろん、その頃はスーパーもコンビニもない。デパートは商店の王様だった。そごうが開店したのは1957年。おれが毎日新聞に就職して2年目の春だった。正月にはでかい松飾りを入り口に飾った。大晦日の泊まり勤務で元旦付けの新聞を刷り、明け方人気のないのをみすまして松飾りを蹴飛ばしたのを覚えている。多分同期のFと一緒。それにしても、なぜ蹴飛ばしたのかな。
こんなにデパートの閉店が続いたら、労働者の解雇も出るんだろうな。昔は、デパートガールは高卒の花形職場だった。60年安保闘争に入る前の毎日労組青年部が、そごうの女性を招いてレコードコンサートをやったことがあった。可愛い女の子がいっぱい来た。中に、おれと同じ高校で一級下のKさんがいた。声をかけられて仲間の前で得意だったことを思い出す。
デパートが儲からなくなれば、閉鎖して資本を回収する。経営者はそれでいいだろうが、中で働く労働者はそう簡単にはいかない。別のデパートに配転といっても、どこも不況なのだから結局失業することになる。デパートガールのことを今は何というか知らないが、憂鬱な春を迎える彼女たちに同情する。
そんなことを取りとめもなく思っている淡雪の溶けた午後である。