戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)閑話休題10/01/24
木曜日の昼まで4月の陽気だったのに、その夜から冷え込み昨夜も震える寒さだった。竹橋で飲んで、あれは8時半頃かな地下鉄で帰途についた。大手町で東西線から千代田線に乗り換える。この時間だから座れなくて当然と覚悟を決めて文庫本(佐伯泰英「テロリストの夏」)をショルダーバッグから取り出した。バッグは目の前の網棚へ。
新御茶ノ水で何人か降りて何人か乗った。ふと前を見るとおれの正面から3人ほど左の席が空いたままだ。その前に立っている青年に座る気配はない。おれはすばやくその席を確保。座ってから網棚に残したバッグが気になったが、立っている間に席を奪われたらいやなので「降りるとき取ればいい」とそのままにして本の続きを読み出した。西日暮里あたりで眠くなったので目をつむった。
はっと目を開けるとホームは松戸駅の雰囲気。ドアが閉まる寸前に外に出た。出たとたんにドアが閉まる。なんだか手元が寂しい感じがする。文庫本しか持っていない。バッグは網棚に乗ったまま行ってしまった。バッグの中には手帳と財布が入っている。近々必要なことがあって財布には7万円ちょっとの現金。おれは一気に酔いが醒めたね。
すぐホームの駅事務所へ。暖房の効いた部屋には2人の職員。やさしく俺の話をきいてくれて「電車は9時40分に我孫子に着きます。あちらで探してもらいますからその時間にここへ来てください」と言う。仕方なく事務所を出てトイレに行きそれでもあとまだかなり待たなければならない。心配で本の内容が頭に入らない。寒いホームで待つこと20分。ちょうど9時40分に先ほどの事務所のドアを開けた。
さっきの職員が受話器を取って我孫子駅の係を呼び出す。おれは緊張。「ありました」との返事。「我孫子駅の6、7番線ホームの事務所に保管してあります」。ちょうどやってきた常磐線快速に乗って我孫子へ。ホーム事務所に行く。手続きは簡単な署名だけでバッグが戻ってきた。
おれは嬉しさの余り「松戸からの運賃を払います」と言うと「ここではいいです。松戸駅で払ってください」とおおらかな返事だ。松戸駅は改札を出ないでも新京成に乗り換えられるのだが、おれは正直に精算窓口で「忘れ物を取りに我孫子までいきました」と申告してスイカで我孫子までの往復料金を払った。
風は冷たかったが心温まる感じがした夜だった。