戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)派遣村住人の「酒とタバコ」は罪悪なのか10/01/09

[明日へのうた]より転載

 「公設派遣村」をインターネットで検索していたら、「産経新聞」の次のような記事に出会った。

 都発表によれば、7日現在の入所者名簿は557人、ところが夕食の配膳数は356人、外出して戻らない人が155人、行方不明者201人なのだそうだ。ピークの4日は833人いたのだから約4割に減ったことになる。就職活動費として2万円が支給されたとたんさっさと姿をくらます。都はこの2万円で酒やタバコを買った人に返金を迫る方針なのだという。いかにも産経らしい角度の記事だ。

 この「就活費2万円を酒やタバコに使うこと」は果たして罪悪なのだろうかとおれは考えた。昨夜、五香駅前のやきとり屋「栄」で飲んでいたら、カウンターで隣り合った60過ぎのおっさんも「けしからん」と憤慨していた。「そんな連中に金をやるのは、おれたちの税金の無駄遣いだ」というわけ。おれは「もっと大きな無駄遣いもあるけどね」とだけ小さく反発したが議論にはしなかった。おっさんの言い分は庶民の感覚として無理もないことだから。

 話を「酒とタバコ」に戻すが、確かに酒もタバコも嗜好品の部類に入るから、それがなければ生きていけないというものではない。しかし、この寒空に野宿していたら「酒でも飲まなきゃやってられない」という気持ちになるのもあながち否定はできまい。「公設派遣村」にくる前に染み付いたそんな習慣をそう急には変えられないのではないか。

 産経記事によれば、7日に施設入所中の50代の男性が死んだが、死因はアルコール性肝炎だったと鬼の首でもとったような書き方。派遣村にすがって集まったのは「生きる意欲のないアル中の人間のクズだ」と言わんばかり。官房機密費も、小沢一郎の不明瞭政治資金も、鳩山さんの母親からの小遣いもいずれも数億円規模。寒空に震える派遣切りされた労働者が、コップ酒の一杯、タバコの一服に気を紛らすことがそんなに罪悪なのか。それにしてもこの「公設派遣村」問題で対応しているのは市民団体の「ワンストップの会」だけで、既存の労働組合の発言がまったく見られないのはどういうことなのか。

 一月ももう8日、おれも老いと折り合いながら活動開始だ。