戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)東電の「企業年金削減」に不同意を12/01/31
東電をはじめ全国電力会社の電気料金値上げが「世論」の批判の的になっている。テレビのワイドショウであるコメンテーターは「企業努力もしないで電力利用者に負担を強いるとは何事だ」といきまいていた。「企業努力」とは従業員の削減、賃金・福利厚生費の引下げなどもっとリストラをしろということ。
これらの「世論」に応える形で政府・東電は「企業年金の削減」を打ち出した。削減を実行するためには、①現役社員(労組員)は労働組合の合意、②OBは労組の合意後、受給者の3分の2以上の同意、が必要となる。東電労組とはまだ合意に達していないにもかかわらず、東電はOBに対する「説明会」を開始した。
東電の「企業年金」制度は1966年、退職金を20%減らしてそれを原資としてスタートした。その後変遷をして退職金と企業負担の割合は50対50となり、2011年9月現在で5191億円の年金資産がある。資産運営は健全で、経常の人件費への負担にはなっていない。
なのに「資金」を取り崩して「原発被害の賠償資金」に充てるというのは筋が通らない。JALの会社更生法適用のときも問題になったが、今回の原発事故も現役労働者やOBには責任がない。会社の不始末の尻拭いをさせられてはたまらない。原発開発を通じて巨額の利益をあげた「原発共同体」が負担すべきである。
09年5月、米自動車最大手ゼネラルモータース(GM)が破産して公的管理になった時、全米自動車労組(UAW)は「退職者年金・健康保険制度」を守り抜いた。これに対して日本の新聞は「(労組要求を呑んだGM社や国の)『労組優遇』が大口債権者との債権削減の再交渉を難航させるだけでなく、GMの早期再建そのものを危うくする懸念もある」(当時の『毎日』記事)と批判した。
JALのときもそうだつたが、年金削減に反対する声を個人エゴのように排撃する。それが「世論」だと言わんばかりのマスコミ。アメリカでは権利として認められる「労組(労働者)優遇」が日本では罪悪視される、これは日本の民主主義の後進性を示すものではないか。
かつて差別争議をたたかった東電争議団は「企業年金削減には『不同意』を」との方針を掲げているが、東電労組も自らの首を絞めるような「削減合意」を拒否する勇気を持つよう期待する。