戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)ハンガリー・オルバン政権の新憲法に思う 12/01/18

[明日へのうた]より転載

 ハンガリーが揺れている。2010年4月にオルバン氏率いる政党フィデスが選挙で圧勝、オルバン政権が誕生した。政権は、メディア規制など強権的な政策を矢継ぎ早に打ち出し、EUの中でギリシャなどとは違った意味で「台風の目」になっている。ついにこの17日、EUの内閣にあたる欧州委員会が「制裁」に踏み出す事態となった。「欧州委 ハンガリー制裁へ」「基本的人権侵害 財政援助停止も」(18日付『毎日』)

 ハンガリー・オルバン政権は昨年12月に新憲法と関連法案を議会に提出し、3分2以上を占める与党の力で強引に可決させた。新憲法では正式国名は「ハンガリー共和国」でなく「ハンガリー」となる。旧ソ連圏の名残を一掃しようというわけだ。オルバン市は共産党政権時代の反権力活動家だったと言われている。

 欧州委員会は新憲法関連法案の次の内容を問題にしている。――①中央銀行幹部の任命権を首相がにぎる、②裁判官や検察官の早期退職が求められる、③情報保護当局の独立性が侵される。ハンガリー国内でも「国会の3分の2を占める政権与党により制定された新憲法や重要な法案は、人間の尊厳や自由、民主主義というEUの基本的価値観に反している」との指摘(ブダペスト・ローランド大学ハルマイ教授)もある。

 ブダペストでは新年早々の2日に数万人の大衆的抗議集会が開かれ、新憲法反対とオルバン首相の退陣を要求している。一方14日にはEUからの脱退を求める極右政党のデモも行われており、国内情勢は混沌の度を深めている。しかし「混沌」は民主主義の曙だとおれは思う。どんどん発言すればいい。

 おれは、92年、01年、03年、06年の4回ハンガリーを訪問している。92年の時は共産党政権崩壊の直後で、おれたちを案内してくれたジョルジュさん(当時ハンガリー観光局の責任者)やガイドのガールさんたちは、これからの「自由な社会」と「市場経済」に夢を託していた。

 しかし21世紀になると、農地を潰して導入した外資の工場は利益がでなくなるやさっさと引き上げて、残るのは荒廃した土地と失業者。あのばら色の夢はどこへ行ったのか。それでもジョルジュさんたちは民主的な政治を目指してがんばっていた。去年亡くなったジョルジュさんがオルバン政権の強権政治を見たら何というだろう。あのガイドで写真家のガールさんはどうしているのだろう。