戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)日仏首脳に共通した「国家理念」の欠如 12/01/09
7日付『毎日』にフランスの雑誌編集長クロード・ルブラン氏の談話が載っている。見出しは「日仏に共通する長期的視野欠落」。4月に第1回投票の行われるフランス大統領選でサルコジ現大統領が苦戦している。5年前に当選した当時のサルコジ氏への期待は失望に変わり、社会党のオランド氏や「脱原発」を訴える緑の党のジョリ氏に足元に迫られ下手すると追い越されそうになっている。何故か。
クロード・ルブラン氏はいう「サルコジ氏に国の将来を展望する目がないことだ」「フランスの次期大統領には、経済に関する実現しない公約よりも、時代の先を読むビジョンが求められている」。それは日本も同じで「野田氏の首相選出は民主党内の人材不足から」だと指摘する。野田氏のTPP積極姿勢は「形を変えた従来の対米従属にすぎず」「若い世代である橋下徹氏の主張もポピュリズムと保守主義を掲げただけに見える」
おれもそう思う。では「時代の先を読むビジョン」「長期的視野」とは具体的には何を指すのか。おれは「民主主義と労働尊重の国家」という理念だと思う。その意味で、同じ『毎日』7日付の丸谷才一・五百旗頭真氏の対談が面白い。戦前の日本の心理の基本に「民主主義」と「労働尊重」の思想が存在したというのだ。
丸谷「戦後の日本が英米型民主主義に近くなったのは、単に米国の圧力でそうなったのではなく、日本人の心理の基本にあるものと合致したからでしょう」。五百旗頭「大正デモクラシーの時代に民主化の第2波が来た。労働争議が頻発するなかで『開明』派の内務省官僚が欧米の労働政策を視察し、自前の労働法案まで作っています。だが当時は議会で多数を得られずお蔵入りになりました」。
昨年9月に刊行された古川景一・川口美貴著「労働協約と地域的拡張適用」という労作がある。この冒頭で著者は、第一次世界大戦後の日本に産業的、地域的労働協約が結ばれていた事実を掘り起こして詳述している。五百旗頭氏のいう官僚が作成した「自前の労働法案」についても触れている。
確かに今は混迷の時代であり、目の前を少しでも明るくする政策の必要性は否定しない。しかし、それらの政策は30年、50年の長期的視野で見て耐えられるものでなければならない。目先の便利さに惑わされて原発容認に走ったあやまちを2度と犯さないためにも・・・。