戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)「水戸黄門最終回」と「北」の将軍様の死 11/12/22

[明日へのうた]より転載

 3日前、久しぶりに夜の2時間ドラマを観た。TBSの「水戸黄門最終回スペシャル」。1969年から42年間続いた「国民的人気ドラマ」である。ドラマのクライマックスで、格さんが懐から印籠を取り出し「この紋所が目に入らんか」と見得を切る。庶民はそれを見て溜飲を下げる、ということになっている。

 おれは以前からこの場面がくると何となく違和感を覚えていた。「善」と「悪」が斬り結んでいる最中、小さな印籠が決定的役割を発揮して戦況を逆転させる。「善」のサポーターである視聴者が拍手をする。その気持ちは分からないわけではない。しかし、印籠は徳川幕府の権力(武力)の象徴なのだ。徳川幕府が庶民にとって絶対的「善」なのか。印籠によって庶民は救われるのか。。

 江戸時代の庶民である農民は、しばしば悪代官によって過酷に年貢を取り立てられた。しかし代官制度は封建的支配体制の根幹をなすものであって、幕府との関係は「善」と「悪」というように対立的には捉えられない。むしろ一体のものと言ってもいいのではないか。

 それから、このドラマにも「幕府転覆をねらう龍刃党」なるものが登場するが、幕府に逆らうものはすべて「悪」という設定にも疑問がある。幕府によるお家断絶の処分で生活の道を絶たれた藩士が「龍刃党」に参加し、龍刃党に命令されて将軍暗殺を企てる。これに対して光圀は「わしが勤め口を世話してやる」と説得。藩士たちは「へへーっ」と恐れ入って刀を捨てる。権力による反対派切り崩しの典型である。

 「現代の将軍様」といわれた北朝鮮の金正日総書記が死んだ。死んだのが17日で発表は51時間後の19日だった。「過労のための心筋梗塞」といわれている。17年前に死んだ父親の金日成首席も死因は「過労のための心筋梗塞」だったそうだ(22日付『毎日』)。金正日総書記は地方視察の列車内で死んだと発表されているが、韓国情報院によると彼の専用列車は15日から平壌市内で停車していたという。

 徳川幕府は結局明治維新で倒された。倒したのは、例えばフランス革命のように民衆ではなく天皇を担いだ反幕の侍たちだった。「北」の将軍様も、本来は民衆デモの渦の中で退陣して欲しかったが、どうやら不透明な権力闘争の最中の出来事だったらしい。これから注目されるのは、北朝鮮民衆(労働者・農民)の動向だとおれは思う。