戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)東電の企業年金減額は重大な労働契約違反 11/11/30

[明日へのうた]より転載

 東電が「原発事故の賠償のため」という理由で企業年金の減額を打ち出した。既に東電OBのもとに「企業年金制度の見直し」なる文書が送付されてきているという(東電差別争議の原告らでつくるニュース『電力東京連絡会』による)。連絡会は「原子力賠償はこれまで大儲けした大株主に負担させよ」「『特別事業計画』で労働者に犠牲を強いるな」と主張している。

 「特別事業計画」とは、政府の「東京電力に関する経営・財務委員会」報告を受けて東電が原子力損害賠償機構と共同で作成したもの。賠償を果たすため「歯止めのない合理化」をすすめる内容となっている。企業年金削減はその一環で、東電西澤社長は「基本的なスタンスとして民間会社とし、合理化・リストラをやり尽くす。そのためには人件費も聖域ではない」と言明している。

 ところでこの「特別事業計画」は超法規的なもの、まるで戦後のマッカーサー指令みたいなものだ。前記「東京連絡会」ニュースは「人員削減や賃金・企業年金などの労働条件に係わる課題も労働組合には報告のみでの提起です」と指摘する。組合との協議抜きですすめられようとしているのだ。

 これにはさすがの東電労組も「労使交渉の合意を軽視するものであり極めて遺憾」「改革推進チームの徹底管理の下、一方的にすすめられることはこれまでの労使関係の信頼を損なうもの」と問題にしている。その通りだとは思うが、おれに言わせれば「これまでの労使関係(癒着)の当然の帰結」ではないのかな。

 企業年金削減には受給者の3分の2の合意が必要となる。「賠償のため」という錦の御旗に公然と反対するのは勇気の要ることだ。多分組合も反対の方針は立てられないだろう。しかし、企業年金は賃金の後払いの性格を持ち、重要な労働契約事項だと思う。減額反対は当然の要求だ。

 アメリカでGMが倒産しそうになったとき、あの全米自動車労組(UAW)は企業年金と退職者の健康保険制度を守るため断固たたかった。日本では世論の動向などいろんな問題を配慮しなければならないだろうが、契約はあくまで大切にするという欧米の権利意識がいま求められているのではないだろうか。