戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)「弱さもまた腐敗する」という言葉の意味11/11/14
鴨志田恵一さんは朝日新聞OBで元朝日新聞労組本部委員長だ。OBになってからも何回か酒席でご一緒したことがある。その鴨志田さんが北九州新聞OB会の会報「新聞OB 北九州」で「平和と戦争」という題の「連載講座」を開いている。今回は「弱さもまた腐敗すること」とのタイトル。
タイトルの異様な響に魅せられて一気に読んだが、これが凄い。書き出しで、亡くなった朝日新聞当時の同僚を偲ぶ。彼は朝日紙面に「権力は腐敗する。弱さもまた腐敗する」とのコラムを書いた。「権力は腐敗するとしばしば言われる。しかし、弱さもまた腐敗することを知るのが、等しく重要であろう。権力は少数者を腐敗させるが、弱さは多数者を腐敗させる」――マーロン・ブランド主演の映画「波止場」の原作者エリック・ホッフアーの言葉だそうである。
鴨志田さんは「(ホッファーは)季節労働者、港湾労働者として米西海岸を渡り歩く長い貧困の生活で見た、アメリカ社会大衆のファナティックな心理と行動に疑問と警戒を抱いてきたからである」と言った後でホッファーの次の言葉を引用している。「きみたちの逆恨みの源泉は、不正への憤りでなく、自分が無力・無能だという意識だ」。こうして「弱さもまた腐敗」していくのだ。
ここまで読んですぐ連想されたのは、例えば60年代後半の明乳の職場だ。組合活動が活発になるのを怖れ嫌悪した経営者は、インフォーマル組織をつくって団結の切り崩しにかかる。そこで起る現象はまさに「弱さの腐敗」だった。同じ職場の労働者を「赤いゴキブリ」「赤水虫」と呼び自らの身を守ろうとする。これは今の大企業職場でも横行しているように思う。
おれも70年代初め、職場の差別政策が盛んな頃、トイレに「戸塚を殺せ」と落書きされた。犯人の目星はすぐついた。入社そこそこの気の弱い青年だった。明け方朝刊印刷が終わった後、地下5階の風呂場の入り口でとっ捕まえて絞り上げた。おれもまだ若かったな。その青年はしばらくして会社を辞めた。
いま大阪で、橋下とかいうファシストまがいの男が知事と市長を独占すると喚いている。大方の弱者が「腐敗」するのか「決起」するのか、試されている。