戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)チリ鉱山事故から1年 いま世界で何が・・・ 11/10/12

[明日へのうた]より転載

 チリ鉱山で地下に33人が閉じ込められ69日ぶりに救出されてから1年が経った。本12日付『毎日』は「チリ鉱山事故 救出から1年」「TV司会者、講演生活、薬依存・・・」「作業員33人 さまざまな人生」との見出しで、救出された労働者のその後を追っている。

 33人中再び別の鉱山で働いているのは2人しかいない。講演やテレビ司会者などで生活している人が半数くらいで、あとは失業状態だ。彼らはもともと小さい鉱山を渡り歩く不安定雇用労働者だった。今回の事故に遭い一躍「英雄」になったが、むろん彼らの本意ではなかった。『毎日』記事では「講演をこなすなど充実した生活を送る」となっているが、果たして講演して歩くことが「充実した生活」なのか。おれには疑問に思える。

 救出後、地元サッカーチームの監督になったフランクリン・ロボスさんは「我々はヒーローじゃない。安全対策をとらなかった鉱山会社の犠牲者だ」と言い切る。真髄をついた言葉だ。事故があったサンホセ鉱山は閉鎖し倒産した。チリ政府は33人中の困窮者14人に年金を支給すると決めたが、問題はチリにおける鉱山業の労働実態をどう改善するかということだろう。この点で政府は責任を果たしていない。

 一方、12日付『赤旗』は「チリ 教育無償化95%賛成」「労組主催の166万人国民投票」とチリにおける労働組合のたたかいを報じている。7日から9日にかけて、チリの教員組合が「無償かつ質の伴った公教育の確立に賛成か反対か」という設問で人口の1割にあたる166万人の国民投票を実施したというのだ。この教員組合の行動に呼応して全国大学生連合は、18、19日に大規模デモを行う予定だ。

 劣悪で危険な労働条件で働く鉱山労働者、教育無償化を要求して行動に立ち上がった教員組合、それに呼応して大規模デモを呼び掛ける学生組織、これらが連帯して政府に立ち向かえば大きな力を発揮することは間違いない。チリ鉱山事故の救出劇を単なる「英雄物語」で終わらせるのでなく、南米チリにおける国民のたたかいへとつなげる努力が必要になる。

 EUギリシャから、中東から、イギリスから、ニューヨークのウォール街から、南米から、国民の幸せを求める大きな運動のうねりが伝わってくるような気がする。