戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)争議団の団交権は憲法28条で保護される11/09/25

[明日へのうた]より転載

 「団体交渉の当事者資格」と労働協約締結権について調べる必要があって、石川吉右衛門の「労働組合法」をめくってみた。そこで思わぬ発見。争議団の団体交渉権に関する記述だ。「一般に、争議団と言われるものも、団体交渉の主体として認められている」というのだ。

 石川教授は「争議団」の定義を次のように言う。「①労働組合とは異なって恒久的な団体ではない。②ある特定の時期に、特定の問題を契機として集まった労働者の集団である。③その目的は、使用者との団体交渉にある。従って、交渉不調の場合は、争議行為に出る可能性もある。④交渉が終われば、その集団は解散する」この定義はまさにおれたちが日頃接している「争議団」そのものである。

 石川教授はさらに「労働組合でなくても、労働者の集団が使用者と団体交渉をしようとすれば、それは憲法28条の適用下にあるのであるから、団結権・団体交渉権・団体行動権は保障されていることになる」と明言し、「不当労働行為についても、労組法7条2項は、これを包含する」と言い切る。

 この点、菅野和夫著「労働法」では「労働組合の組織をもたない労働者の集団でも、代表者を選んで交渉の体制を整えれば、憲法28条の団体交渉権の保護は受ける」と、一応争議団の団交権は認めるものの、「しかし、労組法の不当労働行為救済制度の保護を受けるか否かは否定的に解すべきであろう」と師匠の石川教授とは別の見解だ。理由は「労組法は、労働組合の結成を助成し、それを通じて団体交渉の樹立と労働協約の実現をめざしていると解されるからである」というのだが・・・。

 労働委員会への不当労働行為救済申立には、組合申立と個人申立の2種類がある。労組法7条2項の団交応諾請求を個人が申し立てることは労働委員会では予定していない。争議団では組合資格は認定されないことが確実だから、おれなんかも「争議団の団交権については法的保護は受けられない」と頭から決め付けていた。実際上も「争議団の団交応諾申立」事件は、おれの知っている範囲では見当たらない。石川さんが中労委会長時代に申し立てていれば面白かったな。

 しかし、石川さんも菅野さんも「争議団の団交権」そのものは認めているのだから、「そもそも争議団には団交権などありえない」というところから議論をするのは誤りだということになる。少し遅ればせながら、おれも頭を切り替える必要がありそうだ。人間いくつになっても勉強が肝心だな。