戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)米ウィスコンシン州のリコール出直し選挙11/08/21
15年前くらい前に「マディソン郡の橋」というアメリカ映画を観た。思い出の橋に婦人を焼いた灰を撒くラストシーンが印象に残っている。どんなに楽しいことも、辛いことも、裏切りも、愛情も、ついには灰になって無に帰していく。やりきれないニヒルな気持ちになった記憶がある。
ネットで調べたら、アメリカにはマディソンという地名が23もあるのだそうだ。その羅列のトップがウィスコンシン州の州都マディソン市。このマディソン市で今年3月、州議会を取り巻く大規模デモがあった。ウォーカー知事(共和党)が公務員労働組合の団体交渉権を剥奪する法案を議会に提出したからだ。
このウォーカーという知事は、昨年の知事選で例の「ティーパーティ(茶会運動)」の絶対的支持によって当選。最重要公約は「財政再建のための週政府職員削減」だった。その公約を果たすためには公務員労組を骨抜きにしなければならない。そこで提案されたのが「公務員労組の団交権剥奪」というわけ。
一時議事堂を占拠した全国動員の公務員労組のデモ隊。その中で法案に反対する民主党議員は、議決に必要な定数を不足させる戦術でがんばった。しかし結局は議会を通ってしまう。これに対して労組側は共和党議員6人のリコール運動を繰り広げ、ついに辞職に追い込んだ。
8月9日、6議員の出直し選挙が行われた。共和党は4人を確保、州議会上院の過半数の維持に成功した。この選挙で大活躍したのが「ティーパーティ」だった。彼らは「労組の抵抗に屈せず大ナタをふるった」ウォーカー知事と州議会共和党を高く評価・称賛している。
来年の米大統領選を前に、オバマ再選阻止のカギを握っていると言われる「ティパーティ」運動。『毎日』は「米保守革命 ティパーティの実像」という特派員による特集記事を連載している。「非妥協で政治が機能不全」「労組のリコール運動招く」とどちらかといえば茶会に批判的な論調だ。
さまざまな期待を背負って登場したアメリカ初の黒人大統領バラク・オバマだが、内政・外交ともにふん詰まりの現状である。その中で労組の団交権死守という、原則的なたたかいがアメリカの行く手を照らしているのではないだろうか。