戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)イギリス全国に広がった若者の「暴動」11/08/15

[明日へのうた]より転載

 若者を中心にした「暴動」が広がったイギリス。6日にロンドンで発生した「暴動」はバーミンガム、マンチェスター、リバプールらに広がり、若者ら1600人が逮捕されたが、13日には一応沈静化に向かった。14日付『毎日』、ロンドン支局笠原記者がこの暴動について「英の若者たち大義なき暴動」「人種、階層バラバラ 共通項は閉塞感」との特集記事を書いている。

 『毎日』記事によれば、暴動の中身は①略奪、②放火などの破壊行為、③警察への攻撃――に分類されるという。発端は、ロンドン北部で起った黒人男性射殺への抗議デモ。デモ参加者の一部が暴徒化して略奪に及んだ。それがツイッターなどのソーシャルメディアでつながり模倣犯的に広がった。

 略奪は幼稚な側面を持ち、スーパーからワインを1本盗んだり、盗んだ衣類のサイズが合わないと店に戻ったりする若者の姿があったという。盗品は日用品が中心で「途上国型の略奪」に近い。この辺が「大義なき暴動」といわれる由縁だ。識者曰く「彼らは希望を持てず、失うものは何もないと感じている」。

 『毎日』記事笠原記者は「キャメロン首相らは暴徒を犯罪者と断罪するが、暴動を生んだ全体状況として、社会階層の上昇の機会から取り残された若者らの閉塞感、失業、経済格差の拡大などの問題があるのは間違いない」と指摘する。これは暴動の背景に関する正確な捉え方だと思う。

 昨年暮れ、チュニジアの反政府デモで始まった北アフリカ、中東諸国の民衆革命の嵐は、アルジェリア、イエメン、エジプト、シリア、ヨルダン、リビアなどで長期独裁政権を脅かす勢いでいまも続いている。ヨーロッパでもギリシャやスペイン、ポルトガルなど国家財政危機を理由にした労働者への賃下げ攻撃に対するストやデモが絶えない。中国でも労働者が散発的にデモやストを敢行し、政府は労働者の不満を抑えきれない。タイでも政府批判の大規模デモ。――世界中が揺らいでいる。

 今回のイギリスの「暴動」を、「大義なき暴動」「一過性の若者の憂さ晴らし」と決め付けて犯罪視するだけでは問題の解決にはならないだろう。ヨーロッパでも、北アフリカ・中東でも、アジアや中南米でも、いま一番必要なのは「民主主義の政治」だと思う。個人の幸せを基本に個人の意見を尊重する社会がいまこそ求められている。そんな時こそ、労働組合の姿がクローズアップされなければならない。イギリスの暴動に欠けているのは労働組合の姿なのではないか。