戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

危機のコンビニと新聞販売店の共通点 19/04/11

明日へのうたより転載

 「脱24時間ファミマ本格化」「最大270店舗実証実験」(10日付『毎日』)。コンビニの長時間営業が社会問題になり、業界内部からも改善への動きが出てきた。確かに24時間営業の強制は由々しき問題ではあるが、フランチャイズとコンビニ本部との不平等な契約内容はそれだけではない。2日配信の「ダイヤモンド・オンデマンド」はこの問題に関する「七つの論点」を提起している。

 ①粗利分配方式=売上高から売上原価を引いた粗利のうち5割余をロイヤルティーとして本部が徴収する。なお売れ残りなどの食品廃棄分は売上原価に含まない。この結果店舗の純利益はわずかになる。
 ②人件費の上昇=最低賃金しか支給しなくても人件費は上昇し、その分は全額加盟店負担になる。
 ③売れ残り商品分を加盟店が負担=本部は過大に仕入れさせた分だけロイヤルティーに上乗せする。廃棄による損失は加盟店に押し付けられる。商品の種類や量の決定権は本部にある。

 ④恐怖の契約更新=本部に逆らえば契約更新のハードルが高くなる。売れ残り商品の値引き販売は法律的には認められているが、実際に実行すると契約更新されない可能性が出てくる。
 ⑤ドミナント出店の不安=本部は同じエリアに多店舗が出店すればお客が増えるというが、実際は客の奪い合いになって売り上げが減る。出店の権利は本部に握られているのでオーナーは不安を募らせる。
 ⑥24時間営業=営業時間が長ければ売り上げが増え本部の取り分も増える。しかしオーナーは24時間営業を支える人件費に圧迫されて経営はますます困難になる。
 ⑦法令違反95%=本部への上納負担のためオーナーは従業員を法令違反で働かせる。

 今やコンビニは地域住民にとってなくてはならぬ存在になっている。そのコンビニが問題を抱え、存続の危機に立たされるというのは社会的に見て由々しき事態だろう。ではどうすべきなのか。打開の基本は本部と加盟店が対等平等の契約関係を確立することではないか。そのためには、現に長時間働き、本部と支配従属関係にあるオーナーを「労働者」として社会的に位置づける必要がある。オーナーで組織するコンビニユニオンを労働組合と認め団交を開始し正常な労使関係を打ち立てなければならない。

 コンビニ問題から思い当たるのは、この業界が新聞販売システムと似ているということだ。新聞の場合も発行本社が販売店の生殺与奪の権限を持つ。押し紙制度と言って販売店が注文もしないのに新聞を送り付け代金を請求する。販売店は従業員を労基法違反で働かせる。――もしかするとコンビニ本部は新聞業界をお手本に加盟店支配システムを編み出したのかも知れない。