戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

欧米は新元号フィーバーを懸念している 19/04/02

明日へのうたより転載

 仰々しいバカ騒ぎだと思うけど、やはり元号について一言触れなきゃね。新元号の令和についておれの好きな作家の1人浅田次郎さんが「『令』の字は考えていなかったが、なかなかユニーク。『令』には美しく清らか、尊重するという意味があり」と肯定的に解釈している(2日付『毎日』)。

 もちろんそういう意味もあるのだろうが、おれには「命令」「号令」「指令」「司令」「勅令」「法令」「訓令」「令状」など、いわば「上から目線」の言葉しか思い浮かばない。広辞苑で「令」を引くと「①命じること。いいつけ。②おきて。のり。③長官」などと出てくる。やはり「上から目線」だ。

 元号は元号法によって時の政府が決める。有識者なる者の意見を聞くことになっているが決定権は政府だ。ということは元号には、時の政府の意向が、意識するしないに関わらず反映するのではないかと推測できる。「安倍一強」「聞く耳持たず」「沖縄埋め立て」「原発再稼働」など時の政府は国民に物も言わせず従わせようとの姿勢が強い。なるほど元号に「令」の文字を入れたがるわけだ。とおれは思う。

 政府は新元号は中国の書でなく国書の万葉集に拠ったと誇っているが、これも時の政府の国粋主義志向と無関係ではないだろう。4月2日8:35配信のYahooニュースに、在米ジャーナリスト飯塚真紀子さんの「新元号『令和』欧州メディアは『日本の右傾化』を懸念」のレポートが出ている。

 英・ディリーテレグラフ「伝統を打ち破って、中国の書ではなく日本の書を使うという判断は、安倍政権の国粋主義的傾向と結びついているように見える」
 英・ディーリーメール「新元号の語源は国家の威信の増強を狙う安倍首相の保守的アジェンダが映し出されている」
 米・CNN「和という字は(中略)裕仁天皇時代の昭和の和と同じだが、その文字を選択したのは、安倍首相が、日本の戦争という過去について、ポジティブな論調を推し進めようとしているからだろう」

 なるほど令和の和は昭和の和だ。大東亜戦争をもう一度始める気か。最近の韓国に対する、植民地責任を投げ捨てた反韓思想の鼓吹状況を見ればそれも絵空事でない気がする。いずれにしても祝賀ムード一辺倒の日本国内と違って、諸外国は新元号フィーバーを冷静に見ていることは確かなのだ。世界に通用しない、世界中で日本にしか存在しない元号制度は、この際廃止することにしたらどうだろう。