戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

掃いて捨てるほどいるノーベル平和賞 19/02/19

明日へのうたより転載

 「トランプ氏が推薦依頼」「ノーベル平和賞 昨夏、電話協議で」「野党一斉に批判」(19日付『毎日』)。安倍晋三首相がトランプ大統領をノーベル平和賞候補に推薦したことは事実だった。中距離核戦力(INF)全廃協定やイラン核合意からの離脱など核戦争政策を進めるトランプを「平和賞」に推薦というのは洒落にもならない。「そこまで対米従属しないと首相は務まらないのか」(小川淳也議員)。

 皮肉を込めて「トランプ氏にノーベル平和賞を」と言い出したのは韓国の文在寅大統領。去年の5月のことだ。南北朝鮮の対話促進に尽力した文氏に「ノーベル平和賞を」の声がかかったのに対し、同氏は「ノーベル賞はトランプ大統領に。われわれは平和だけもらえばいい」と答えた。立派だ。

 そもそも国の最高指導者でノーベル平和賞をもらったのは掃いて捨てるほどいる。1957年のピアソン・カナダ首相を筆頭に、佐藤栄作・日本首相(74年)、ベギン・イスラエル首相(78年)、ワレサ・ポーランド大統領(83年)、サンチェス・コスタリカ大統領(87年)、ゴルバチョフ・ソ連最高指導者(90年)、マンデラ・南ア大統領(93年)、ペレス・イスラエル大統領(94年)、金大中・韓国大統領(2000年)、カーター・アメリカ大統領(02年)、オバマアメリカ大統領(09年)、サントス・コロンビア大統領(16年)。賞に値する人物もいれば、賞金を返してもらいたい奴もいる。

 「複数の外交筋によると、トランプ氏は(去年8月22日の)電話協議で「6月の米朝首脳会談後、ミサイルは日本の上空を飛んでいるか?」などと成果を誇り、ノーベル賞推薦を首相に打診したという。首相は当日、山梨県鳴沢村の別荘で夕方まで過ごしていたが、電話協議のため急きょ帰京していた」(『毎日』)。

 安倍首相は18日の予算委員会で「ノーベル賞委員会は推薦者を50年明かさない」ととぼけた答えで質問をはぐらかしているが、本人も少しは恥ずかしいことと思っているのかな。そりゃそうだよ。「平和」と反対極にいるトランプ氏をあろうことか「平和賞」とは・・・。譬えがちょっと古くて恐縮だが、昭和天皇か東条英機に平和賞を授与するようなものだ。

 おれは去年の5月4日付の本ブログにこう記した。「おれとしてはトランプにノーベル平和賞をやるわけにはいかない。常識的には文在寅だけど、この際サプライズとして金正恩にしたらどうかと思うのだが、皆さんいかがですか」。