戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

官邸の言論規制に断固抗議の新聞労連がんばれ 19/02/06

明日へのうたより転載

 NHKで安倍首相の記者会見を視聴したことがある。あまりの迫力のなさに愕然とした。記者の質問は新聞記事にすれば一行で済むような紋切り型。答える首相は官僚がつくったであろう原稿を読むだけ。質問者以外は下を向いてノートパソコンのキーを叩いている。空虚な時間の流れだ。

 そんな記者会見の中で、官房長官会見だけは迫力と緊張感に溢れているとのこと。東京新聞の望月衣塑子記者ががんばっているからだ。おれにはこれが普通の記者の姿だと思えるが、今や彼女は突飛な記者らしい。菅義偉官房長官は嫌悪を露わにし、司会の上村秀紀報道室長は「簡潔に」を連呼し質問を妨害する。

 昨年8月、東京新聞政治部・官邸キャップに対し、上村室長名で「質問は正式決定・発表前の内容に言及したもので誠に遺憾である。貴社に対して再発防止の徹底を強く要請する」旨の抗議書を突きつけた。さらに年末の18年12月28日、今度は内閣記者会宛に同趣旨の申し入れを行っていたというのだ。

 この官房報道室長の「申し入れ」について新聞労連が2月5日、「首相官邸の質問制限に抗議する」という南彰執行委員長名の声明を発表した。声明は「官邸の意に沿わない質問の権利を制限し、国民の『知る権利』を狭めるもので、決して容認することはできません」と強く抗議の意思を示している。

 そもそも官邸が質問内容を「事実誤認」と騒ぎ立て、「正確な事実を踏まえた質問」を要求すること自体がちゃんちゃらおかしい、とおれは思う。辺野古のサンゴ移設問題やその他諸々の嘘を並べ立てる安倍首相はどうなんだ。平気で虚偽・隠蔽された資料を作る官僚機構をまずやり玉にあげたらどうだ。

 「2017年5月17日の記者会見で、『総理のご意向』などと書かれた文部科学省の文書」を「怪文書のようなものだ」と否定した菅官房長官こそ「内外の幅広い層に誤った事実認識を拡散させる」行為の張本人ではないか。「日本政府の国際的信用を失墜させるものです」と声明は鋭く指摘する。

 新聞労連の声明は最後に「日本の中枢である首相官邸の、事実をねじ曲げ、記者を選別する記者会見の対応が、悪しき前例として日本各地に広まることも危惧しています。首相官邸はただちに不公正な記者会見のあり方を改めるよう、強く求めます」と結んでいる。その通りだと思う。