戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

新聞販売店が料理の出前とは 18/12/24

明日へのうたより転載

 なるほどこれも新聞販売店の生き残り策の一つか。ネットにこんな記事があった。「『出前館』急成長のカギは“新聞配達員”、最短20分で届く日本最大の出前専門サイト」(12月23日配信「食品産業通信社」ニュースweb)。出前事業と朝日新聞社が提携しているというのだ。どんな事業か。

 「自宅で配達員を持たない店舗の料理を配達するサービス」で、シェアリングデリバリーと呼ばれる。飲食店は客から注文が入ると料理を仕上げ、配達は朝日新聞サービスアンカー(ASA)等に任せる。飲食店は配達要員無しで出前ができ、ASAは朝夕刊配達の合間を活用して配達手数料が入る。

 このシステムを運営しているのが「出前館」で、本社は「夢の創造委員会」という一風変わった社名。「同事業の飛躍的な成長の契機は、新聞配達員を活用した配達パートナーによるシェアリングデリバリーサービスの導入だという。16年12月に朝日新聞社との提携で本格スタートした同サービスは、78拠点まで拡大。人手不足から配達機能を持てない飲食店の収益拡大につながる画期的サービスとして注目を集め、加盟する店舗も右肩上がりで拡大中だ」(「食品産業出版社」ニュースweb)。

 「ASAでは早朝と夕方を除いたバイクが稼働していない時間を活用し、出前館オリジナルボックスをバイクに取り付け、料理を配達している。既に持っている配達インフラを活用し、多額の設備投資をしなくても新事業を展開できるとして、新たなシェアリングデリ拠点に名乗り出るASAは増加中だ」。

 新聞販売店は「地元の地理に詳しく、配達インフラが確立している」としての評価が高い。これまでも宅配サービスやポスティングなどに手を広げているが、飲食店の出前までやっているとは知らなかった。確かに高齢化社会を迎えて食事・料理の宅配サービスはこれからの成長業種だろう。販売店のノウハウを活かすのはいいことだろうが、そんなにうまい話ばかりではないだろう。

 第一、配達労働者の労働条件はどうなんだ。早朝配達で疲れたからだを休めようとした途端、出前に行ってこいと言われたら酷い話ではないか。バイクは空いているかもしれないが、それを使って配達するのは販売店労働者だ。販売店の生き残り策の犠牲にされるような気がする。それもこれも本体の新聞産業の衰退が原因していることを思えば情けないというか内心忸怩たる思いだ。