戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

今年読んだ文庫本 18/11/15

明日へのうたより転載

 長い間おれの図書館は移動する電車の中だった。ところが去年の秋以来、OB会や九条の会の役職を降りたためめっきり都内へ出向く回数が減った。当然ながら本を読む時間も少なくなる。どのくらい減ったのかなと調べてみた。それでも結構読んでるものだ。まだ今年はひと月あるがまとめてみた。

 「青春の門(風雲篇)」五木寛之、「娼婦の眼」池波正太郎、「ラオスにいったい何があるというんですか?」村上春樹、「房総の列車が停まった日」西村京太郎、「校長、お電話です!」佐川光晴、「拳に聞け」塩田武士、「天国までの百マイル」浅田次郎、「孫物語」椎名誠。

 佐川光晴はお父さんが全学研労組の三役だった。おれが都労委委員になった1977年当時、解雇や配転、支配介入といった労組攻撃に遭って労働争議の真っ最中だった。都労委にも20件ほどの事件を申し立てており、おれが前任者の中根さんから引き継いで担当委員になった。組合は過激派が執行部を握っていて出版労連とも敵対関係だった。息子さんの著書は穏やかで人間愛に溢れていてジーンとくる内容だ。

 塩田武士は元神戸新聞記者。去年かな、関西の中堅新聞社の労使団交を小説にしたのを読んで大いに共感した。今度の話ではボクシングジムを舞台に、あまり上等でない登場人物が重なり合う。父親をはじめ腹に一物ある大人たちに翻弄される新人ボクサー。しかし翻弄されていたのは実は大人たちだった。

 五木寛之もしぶといよな。もう止めたと思っていた「青春の門」だが、まだまだ続ける気だ。それにしても主人公の伊吹信介は女にもてる。この風雲篇ではロシアの少女に惚れられる。ロシアからヨーロッパを目指す旅の前夜、「信介はアニョータの柔軟な体をまさぐり、やがてまっすぐ迷わずに彼女の中に入っていった」なんて男冥利に尽きるではないか。さらなる続編に期待する。

 昨日、用があって松戸駅に行ったついでに駅前の本屋に寄り、「奇譚を売る店」芦辺拓、「ブラック オア ホワイト」浅田次郎の2冊の文庫本を買ってきた。芦辺拓は以前『赤旗』に「新・二都物語」を連載したがこれが奇想天外波乱万丈の物語で超面白かった。この2冊を今年中に読み終えるとちょうど10冊になる。電車だけでは読み終わりそうにないので炬燵の中も図書館にしようかな。

 今朝の最低気温は一桁だった。枝に残っていた柿も全部収穫を済ませた。本格的な冬の訪れになりそうだ。