戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

ストロングマンの強権支配とたたかおう 18/11/06

明日へのうたより転載

 「ストロングマン選択」「民主主義破壊の危険性」。11月4日付『毎日』2面「時代の風」欄で、元「エコノミスト」編集長のビル・エモット氏はこのように警告を発している。ブラジル大統領選で右翼のボルソナルが当選したことに関してだ。なるほど「ストロングマン」か、うまいこと言うな。

 「それぞれの国の異なる状況を反映した偶然の一致なのだろうか、それともグローバルなテーマや原因があるのだろうか。ブラジル大統領選でのボルソナル氏の勝利はこんな疑問を突きつける。フィリッピンでドゥテルテ大統領が選ばれたのと同様、ブラジルの有権者は民主主義に反する「ストロングマン(強権的指導者)を選んだ」。ボルソナルはかつてブラジルを支配した軍政を称賛しているという。

 エモット氏はストロングマンの系譜として、ドゥテルテのほかにハンガリーのオルパン首相、トルコのエルドアン大統領、イタリアのサルビーニ副首相を挙げる。さらにアメリカのトランプ大統領、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席もそのリストに入ると指摘する。おれには我が国の安倍首相、北朝鮮の金正恩もお仲間に入りたいと念願しているように思える。若干格下だけどね。

 「危惧すべきは民主的に選ばれたストロングマンたちである」(エモット氏)。民主主義に反する国家指導者を民主的手法で国民が自ら選ぶ。かつてヒットラーも民主的な選挙で選ばれた。「ストロングマンが有権者の支持を得て、民主主義を内から破壊するかもしれないのだ」。

 何故有権者はボルソナルやドゥテルテを選ぶのか。エモット氏は「共通するのは恐怖心とストレスだと思う。ボルソナル氏勝利はブラジルで多発する犯罪で説明できる。フィリッピンのドゥテルテ大統領誕生の背景でもある。法と秩序が腐敗して機能不全になると、より強力な解決策に有権者が誘惑されるのは無理はない」と解説する。法秩序の腐敗が民主的手段による民主主義破壊へと結びつくのだ。

 そこで問題は「我が国の現状」である。首相の嘘を上塗りする高級官僚の忖度、沖縄の新基地強行のための行政不服の茶番劇、国や企業寄りの判決を出す裁判官、国家資金垂れ流しの金融緩和、枚挙にいとまないほどの法秩序の腐敗現象。国民の恐怖心とストレスは限界に達している。「民主主義と法の支配のための闘いは、日々、繰り返さなければならないのだ」とエモット氏。おれたちはたたかう以外にない。