戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

強権的無法国家志向の安倍政権 18/11/01

明日へのうたより転載

 「徴用工 賠償命令が確定」「韓国最高裁 新日鉄住金、敗訴」(10月31日付『毎日』)。「戦時中に日本の製鉄所で働かされていた韓国人の元徴用工4人が損害賠償を求めた訴訟で、韓国最高裁(大法院)は30日、新日鉄住金(旧新日本製鉄)の上告を棄却し、原告1人あたり1億ウォン(約1000万円)を支払うよう命じる2審判決が確定した」。元徴用工の個人請求権が認められたのだ。

 この判決に対する日本政府の態度がメチャクチャ酷い。「企業に和解拒否要請」「徴用工判決 政府、説明会開催へ」(11月1日付『毎日』)。同じような請求権訴訟を起こされている企業が14社あり、続々と敗訴する可能性が出てきた。企業の中には今後の日韓経済関係を考慮して和解する方向を考えているところがあるが、それを国の命令で止めろという。私企業の経営権にも介入するつもりだ。

 日本政府はどうやら法治国家としての体面を投げ捨てたらしい。沖縄の新基地問題でも違法手段の強行が目立つ。翁長雄志前沖縄県知事が命を賭して実行した「辺野古埋め立て承認の取り消し決定」を禁じ手を使ってひっくり返した。県知事選に示された県民の声は踏みにじられた。沖縄は怒りにふるえている。

 琉球新報は言う。「辺野古撤回効力停止 手続き違法で本来無効だ」(31日付『琉球新報』社説)。「石井啓一国土交通相は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設を巡り、県による埋め立て承認撤回処分の効力を一時停止すると明らかにした。防衛省沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき提出した審査請求・執行停止申立てを認めたのだ」。ちなみに石井国交相は公明党からの入閣である。

 「安倍内閣の方針に従って突き進む防衛省の申し立てを、内閣の一員である国交相が審査するのだから、公平性、中立性など望むべくもない」「法治主義にもとる一連のやりとりを根拠として、新基地建設のための埋め立て工事を強行することは、無法の上に無法を積み重ねるようなものだ。断じて容認できない」。

 国民生活に公共のルールがあるように、政府にも法に基づく政治のルールがあってしかるべきだ。政権を握れは「何でもあり」では国の権威は失われる。「安倍政権は一度立ち止まって、冷静に考えてほしい。強権国家としての道を歩むのか。民主国家として踏みとどまるのか。重大な岐路に立っていることを自覚すべきである」と『琉球新報』社説は結ぶ。まったく同感である。