戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

佐高信氏への愛想尽かし 18/10/13

明日へのうたより転載

 佐高信氏が『週間金曜日』の今週号(10月12日付)から長年つづいた編集委員を辞めた。表紙の上辺から名前が消えた。どうやら本人の意向らしい。氏は5日付の同誌で「ひとりに還る」と題して辞める心境を語っている。何度読み返しても酷い文章である。これまでの歯切れのよさはどこへいったのか。

 氏は「辞任に踏み切った」第一の理由に「盗用問題」に対する社員の鈍感さを挙げる。「盗用は出版社にとって一発で信用をなくす行為」であるにかかわらず、社員は責任を問われず、編集委員にかぶされていたという。そんなことはないと思うが、だから何だというのだ。責任を持ちたくないのか。

 辞める第二の理由は「(読者は)今日おもしろくなければ明日は買ってくれない」という厳しさが本誌には欠けているからだと言う。個人の感想だから何を言うのも勝手だが、「厳しさ」に欠けている論拠として挙げた「他では通用しないレベルの連載が惰性的に続いている」との指摘は酷すぎる。

 『週間金曜日』には次のような連載物がある。「西谷玲の政治時評」「高橋伸彰の経済私考」「さらん日記」「たとえば世界でいま」「マイケル・ペンのペンと剣」「初めて老いった」「犬が王様さまを見て、何が悪い?」「話の特集 矢崎泰久 中山千夏」「なまくらのれん 小室等」「写日記 松元ヒロ」

 「俺と写真 本多勝一」「浜矩子の経済私考」「風速計 田中優子」「無責任架空対談 松崎菊也」「らんきりゅう 雨宮処凛」「金曜俳句 櫂未知子」「『不道徳母さん講座』倉本さおり」「それでもそれでもそれでも」など。佐高氏自身も辞任するまで「佐高信の新・政経外科」を連載していた。

 これらを全部ひっくるめて「他では通用しないレベルの連載」と一刀両断するのはあまりにも乱暴だ(おれなんか他のメディアにない面白さにつられて真っ先に読む)。自分一人が世間に通用する立派なジャーナリストで他はクズだと言わんばかり。ちょっと思い上がりもいい加減にしたら、と言いたくなる。

 佐高氏は「編集委員が無報酬であることに驚かれることも多い」ともいう。これもあいまいな表現で、自分が驚いているのか他人が驚いたといっているのかはっきりしない。はっきりしているのは「編集委員が無報酬」であることに不満を持っているらしいということだ。佐高氏の辞任の真相は案外こんなところにあるのではないかと勘繰りたくなる。いずれにしてもおれが佐高信氏に愛想をつかしたことは事実だ。