戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

期日前投票は疑問だらけ 18/09/07

明日へのうたより転載

 沖縄知事選が9月13日告示、30日投票で行われる。志半ばで無念の死を遂げた翁長雄志知事の遺志を継げるかどうかの大事な選挙である。既に翁長氏の後継者としてデニー玉城氏が立候補を表明し、自公が推す佐喜眞淳候補と対決姿勢を強めている。翁長知事の悲願であった「辺野古新基地ノー」を、どうしても「オール沖縄」のデニー玉城さんに継いでもらいたい。告示日を1週間後に控え強く願う。

 それにしても気がかりなのは最近の選挙で期日前投票が異常に増えていることである。去年(2017年)10月22日に行われた衆院選では期日前投票が2137万人に達した。有権者は1億609万人で投票率は53.6%、5694万人が投票したことになる(端数切捨てなので数字が若干合わない)。だからこの選挙では投票者の実に37.5%が期日前投票ということになる。

 これが地方選挙になるともっと顕著だ。今年の2月4日に行われた沖縄・名護市長選を見てみよう。オール沖縄の稲嶺進現職に自公推薦の渡久地武豊氏が挑んだ。投票率79.9%で当日投票が15,864票に対し期日前投票が21,660票。期日前投票が57.7%と当日投票を上回ったのである。この選挙の事前の予想ではほぼ互角、もしくはわずかに稲嶺有利だった。投票日の出口調査でも予想と同じような推移だったが、結果は渡久地20,389票、稲嶺16,831票の大差だった。

 選挙に期日前投票が採用されたのはそう遠い昔ではない。公職選挙法が改正され公布されたのが2003年6月11日、その年の12月1日から実施された。それ以前にも不在者投票という制度があったが、要件が厳格で、投票方法も二重の封筒に投票用紙を入れ投票者が署名しなければならなかった。これを簡素化させたのが期日前投票で、選挙区内数か所に設けられた投票所で手軽にできるようになった。

 そもそも日本の選挙方法は「投票日当日投票所投票主義」と言って、有権者が投票日に定められた投票所で直接投票するのが原則だった。期日前投票が総投票数の半数を超えるという現状は、本来の投票原則がなし崩しにされていることを意味しているのではないだろうか。

 以前から投票日当日の投票動向と選挙結果の乖離が指摘されてきた。選挙結果が投票の例外規定のはずの期日前投票によって左右されるようになっていることは間違いない。期日前投票を全面否定するつもりはないが、法律に決められている病気、仕事、公務などの投票日以外でなければならない投票要件を厳格に守らせることが必要なのではないか。