戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

地球上の空気が薄くなる日 18/07/30

明日へのうたより転載

 夜中に息苦しくなって目が覚めた。熱帯夜のせいもあるが、直接的には鼻づまりだ。指を鼻の穴に突っ込んで鼻糞の塊をとったら少しは楽になった。それにしても必要な空気が十分に肺に送り込めないというのは人を不安に陥れる。死亡率の第一位は肺がんだというがおれは呼吸困難で死ぬのだけは嫌だな。

 話は飛ぶが、台風12号が日本列島を東から西へ縦断した。これまで日本を襲うった台風とは逆の、常識を覆すコースだという。今年の7月は超高温が続き、関西から中国、四国にまたがる広範囲の地域に深刻な水害をもたらした。地球の温暖化にともなう世界的な異常気象の影響だと思われる。

 おれが心配するのは異常気象と空気との関係だ。今おれたちは無意識に呼吸している。もし空気がなくなったら2分もしないで人類は死滅する。一気になくならないとしても、例えば排気ガス等の環境汚染により酸素が徐々に足りなくなる現象は既に世界中で起こっている。それも心配だがおれは空気そのものが地球上に不足してくるんじゃないかと杞憂かも知れないが恐れている。

 おれたちが無意識に空気を吸って生きていられるのは、地球が大気に覆われているからだ。同じ大気圏でも高度差によって空気の濃度(酸素濃度)が異なる。平地(海抜0メートル)を100とすれば、1000メートルで88、2000メートルで78、3000メートルで68、5000メートルでは53になり、エベレスト頂上(8820メートル)になると平地の30%程度の濃度しかない。高度順応型に鍛錬した人間でも、日常的に暮らしていける限界は3000メートルだと言われている。

 このまま地球温暖化、異常気象が進行すると、しまいには空気の濃度に影響が出てくるのではないか、というのがおれの心配だ。詳しくは知らないが、空気は緑の森が炭酸ガスを吸って酸素を吐き出してくれるから濃度を保っているはずだ。地球規模の環境破壊で緑はどんどん失われている。酸素濃度を保つ自然のシステムに狂いが生じ、もし今の濃度の70%になったとすれば人類はどうなるか。

 昔は空気と水は無料(ただ)と言われた。今飲料水はほとんどの人が市販のミネラルウォーターに頼っている。水はただではなくなった。そのうち空気が薄くなると酸素ボンベが生存の条件になるんじゃないかな。渋谷の駅前交差点を酸素ボンベを背負った若者が黙々と渡っている光景もあながち幻視と言い切れないのではないか。熱帯夜の寝苦しい夜、そんな悪夢に襲われる。ああいやだいやだ。