戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

豪雨から岩国基地に思いを馳せる 18/07/12

明日へのうたより転載

 広島、岡山を中心に北九州から岐阜県まで広範囲の水害に見舞われた。雨が止んだ後も河川の氾濫やため池の決壊などの危険が続いており、気を許せない状態だ。昨日の朝、広島在住の太田武男さんにお見舞いの電話をした。「うちは高台なので心配はないが、地域によっては大変なことになってる」。

 太田さんの話。「豪雨被害も大変だが岩国米軍基地の拡大強化も大問題、きのうも現地で抗議行動をしたが参加者が高齢者ばかりでね」。岩国市長が大変な悪で、米軍基地の拡張受け入れで町おこしをする考えらしい。そう言えば5年前に新聞OB九条の会で岩国基地の視察に行ったことがあった。

 2013年9月6日から9日まで、岩国、広島、呉を巡る「平和ツアー」を企画し21人が参加した。羽田から全日空機で岩国錦帯橋空港に飛んだ。この空港は米軍と民間が共用している。というより米軍の飛行場の片隅を1日4往復だけ使わせてもらっている。すぐ近くに巨大な米軍基地がある。

 おれたち一行は空港から錦帯橋へ行き、そこで昼飯を食い、貸切バスで基地の視察に出発した。案内をしてくれたのは岩国地域労連の市岡彰事務局長。「最近の米軍再編で岩国は神奈川の厚木、沖縄の普天間とともに重点基地に位置付けられた。我々は住民とともに米軍住宅反対、爆音被害を訴えて裁判を起こしているが、なかなか運動としては困難だ」と市岡さん。地元の人たちの態度は一様ではないという。

 バスは工事中の名目で至近距離には近づけず、高台から基地を一望するにとどまった。その後地元の平和団体が用意してくれた市出張所の会議室で、地域労連、愛宕山(米軍住宅予定地)を守る会、岩国革新懇などの人たちと交流会を開いた。地元のおばさんたちの元気のいいマスコミ批判にこちらタジタジ。「新聞は基地の現実を報道する義務をおろそかにしている。戦前の大政翼賛会のていたらくだ」。

 ツアー一行の気持ちとして一定のカンパを差し上げた。それに対する返礼ということで、清酒を2本いただいた。岩国市のある山口県では銘酒「獺祭」が有名だが、おれたちがもらったのは「五橋」。五つの山のある錦帯橋の酒という意味で名付けた。地元の皆さんによれば「獺祭なんか目じゃない」という。この純米大吟醸「五橋」はその夜の二次会で飲んだが確かにその清涼な味わいは獺祭以上だった。

 あれから5年、市岡さんやおばさんたちは相変わらず元気で頑張っているだろうか。