戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

インドネシア・ジョコウイ大統領の正念場 18/05/22

明日へのうたより転載

 バリ島に来ている。乾季の空は紺碧だ。確かに暑いが日本の蒸し暑さとはちょっと違う。どこか爽やかさが感じられる。午前中両替と買い出しに行ってきた。2万円が251万5000ルピア。財布に札束。気が大きくなる。そこでスーパーで買い物。地ワイン2本、地ビール缶5本、生ハム、サラミ、トマト、レタスで計55万6350ルピア。約5000円というところか。朝洗濯した丸首とパンツが手絞りなのにもう乾いた。

 インドネシアの日本語新聞「じゃかるた新聞」5月21日付に「レフォルマシ道半ば」「スハルト退陣から20年」の記事。レフォルマシとは改革の意味で、反スハルト運動の学生らのスローガン。当時の中心的活動家は今、ジョコウイ大統領を支える重鎮になっている。

 スハルト大統領に対するインドネシア国民の評価は下がり気味だが今でも歴代高位だという。民間調査機関インドバロメーターの「1945年の独立以来最も成功した大統領は誰か」という世論調査の結果が「じゃかるた新聞」に載っている。4月15日~22日まで、1200人に対して面接調査をしたもの。

 1位はスハルトで32.9%。これは前回調査(2011年)より7.6ポイント落ちている。2位は初代大統領のスカルノで21.3%、3位が現大統領のジョコウイで17.8%。ジョコウイの前の大統領のメガワティは0.6%と歴代最低だ。この結果に対してスハルト打倒運動をした元活動家のプディマン・スジャトミコ氏は「スハルト氏がトップなのは当然。任期も最も長く、功績も多い」と認めている。

 とは言えスハルトが強権政治、汚職体質であった本質は消えない。スハルト退陣後4回の憲法改正を行い、政治の民主化の努力がなされた。特に深刻だったのが汚職の蔓延だった。2003年に独立捜査機関「汚職撲滅委員会」が設立され、汚職絶滅への機運が高まった。現職のジョコウイ大統領になってからやっとその効果が表れ、政権発足からの3年間で汚職摘発件数はそれまでの6倍に達している。

 来年はインドネシア大統領選挙の年である。6年間のジョコウイ大統領の実績が問われる。軍からも大資本からも独立した庶民政治家としての本領を発揮できたのかどうか。おれはこの間ずっとバリ島というインドネシアの一地方と付き合ってきたが、おれの見る限り島のリゾート開発、アメリカや日本の企業進出が著しいように思える。それが庶民の生活に寄与しているのかどうか。それが問われるように思う。