戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)真夏の手打ちそば屋で思い出したこと 10/08/02

[明日へのうた]より転載

 暑い日が続くが結構風が強いので家の中にいるより外の方がまだ少しましだ。というわけで、自転車に乗って桜通りの手打ちそば「南部」に行ってきた。850円の天ざると500円の生ビールを注文。「ビールは天ざると一緒に持ってきて・・・」と頼む。天ぷらはえび2本にピーマンのかけら。それをほほ張りながら飲むビールの味はなんともいえない。美味。

  ビールを終えて、舌触り抜群のそばを食っていたら50数年前の毎日新聞食堂を思い出した。当時の社屋は有楽町。おれは入社2年か3年目。もりそば、かけそばは17円。ラーメンが30円だった。ライスが多分13円くらいだったから、ラーメンライスにすれば50円以下で満腹することができた。それでもその50円がなくてかけそば17円で我慢しなければならない日もあった。そばを受け取るカウンターに刻みネギを盛ったドンブリがあって、好きなだけいれられるのが嬉しいサービスだった。

  真夏の輪転職場は熱地獄だった。作業衣が水をかぶったように汗でびしょ濡れになった。休憩室には塩の入った甕が用意されてあって、おれたちは一仕事おえると塩を舐めて汗で流れた塩分を補給した。一日おきの徹夜作業。夜になっても暑気は去らない。

  深夜零時頃から、みんな裸で職場集会をやった。おれは24歳で執行委員に選出された。250人の職場を執行委員2人で取り仕切った。人員増や職場改善の要求が、会社から洟も引っ掛けられなくて何度もみんなの前で泣いた記憶がある。それでも労働組合運動はおれの生き甲斐だったな。

  今は当時と比べ、温度調整をはじめ職場環境は抜群に改良されているだろう。刻みネギを山盛りしたかけそばで空腹を満たすこともないだろう。しかしあの裸で議論した職場集会の熱気はどうなったのか。そもそも新聞社の社屋から輪転機は姿を消してしまった。これを社会の進歩と言うのか。おれには疑問だ。