戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

えっ毎日新聞でこんなことあり? 18/03/28

明日へのうたより転載

 牧太郎さんのブログ(3月27日付)を読んでびっくりした。えっまさかそんなことが、と一瞬疑った。27日夕刊に載るはずだったコラム「牧太郎の大きい声では言えないが」(最終回)が没になったというのだ。牧さんは没になった原稿全文をブログにアップしている。

 タイトルは【「青い空」で会いましょう】。東京の下町で料亭を営んでいた肝っ玉母さんの話が枕。新聞記者は「権力を監視すること」という牧さんの信念の吐露のあとに「最近、新聞が『権力』になってしまったように思うのです』と続く。何故なら新聞業界は消費税増税にあたって「購読料の軽減税率」を求めている。この主張は「税の不平等」に繋がるのではないか。という主旨である。

 原稿は21日午前中にデスクに渡された。デスクから「軽減税率」のところを書き直してもらえないかとの注文。理由は①社論と正反対、②これでは新聞社が権力を行使しているとの誤った印象を読者に抱かせるの2点。牧さんは①社論に反する意見にも柔軟に対応するのが「民主主義の新聞」ではないか、②軽減税率を求める結果、新聞が与党に与して安倍一強の政治状況をつくっているとの批判が存在する、僕はそれがまさに心配なのだ、として書き直しを拒否。その結果原稿は没になったというのだ。

 ブログによれば、毎日新聞の内部でこの問題を〝材料〟にして「新聞とは何か」という真剣な議論がされた。牧さんを支持する人たち「編集編成局のトップと僕の間に挟まって、苦労された仲間」に牧さんは「ごめんなさい」と頭を下げている。28日のブログによればその人たちにモナカを贈ったようだ。

 毎日新聞が巨額赤字を計上して倒産の危機に瀕したことがある。財界や金融機関は毎日解体を狙って攻撃を仕掛けてきた。1974年から3年間の悪戦苦闘の末、やっと立ち直るとき労使交渉でつくられたのが「毎日新聞編集綱領」である。その第三項に「毎日新聞は社の内外を問わず、あらゆる不当な干渉を排して編集の独立を守る」とある。不当な干渉は外部からだけでなく内部からも矢を射られるのである。

 牧さんはブログの最後で「たった一人『新聞の軽減税率』に反対した『名も無き新聞人』がいたことを覚えてもらいたい!」と書いているが、けっして「一人」ではない。あれたちOBも含めて社の中にも同志はたくさんいる。労働組合だって黙っているはずがない。新聞経営が苦しければ苦しいほど読者との繋がり、読者の支持が大切になる。牧さんの叫びは毎日新聞の明日を紡ぐ原点になるとおれは確信する。