戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

「働き方改革」連合は政権の共犯者 18/02/23

明日へのうたより転載

 国会退出が予定されている「働き方改革」関連法案についての報道が花盛りだ。「『データ―1万件再精査』」「裁量労働制 首相が答弁 衆院予算委」「野党追及に政府強弁」「『抱き合わせ』法案 楯に反論」「データ問題 与党に危機感」「法案提出遅れ必至」(23日付『毎日』)。

 「裁量労働制問題 虚偽データ新たに117件 厚労相認める さらに増加も」「調査・真相究明は急務」「『働き方改革』法案は提出断念を 首相自身の責任も重大 志位委員長が会見」「裁量労働データ捏造」「居直り、無反省、首相答弁」「撤回したのに法案固執」「都合悪いデータ触れず」「〝役所〟に責任転嫁」「労政審に戻し議論せよ」(23日付『赤旗』)。

 データが捏造でも法案は撤回しない、という安倍晋三首相の信念を支えているのが労働政策審議会である。「労政審でご議論いただき、労働時間等の資料も含めて審議をしたと了解している」。この問題について『赤旗』は「裁量労働 虚偽データで労政審は議論」「肝心の実態調査結果示さず」と指摘して「審議やり直しを」と主張している。労政審の場で実態調査の説明がなされていないという指摘である。

 『赤旗』によれば「事態をゆがめる調査手法で集めたデータであることを説明しないまま審議会に報告されていました」ということだが、今回問題になった2013年10作成の「労働時間等実態調査」そのものは労政審に提出されているのだ。提出した厚労省側から「事態をゆがめる調査手法で集めたデータ」ですと説明するわけがない。労政審の委員にいんちきデータを見抜く能力がなかったということだ。

 労政審には労働者側委員として連合代表が出ている。いったい何をやっていたのだ。審議会に出て日当もらうだけが仕事しゃないだろう。資料として出されたデータをきちんと読めばすぐにずさんさが分かったはずだ。そもそも労働者代表に連合しか認めない審議会のあり方が大問題なのだ。最低賃金審議会をはじめ国の審議会はほぼ全部連合独占だ。それで労働者代表と言えるのか。

 そもそも裁量労働制は連合がその気になれば明日からでもストップできる制度なのだ。裁量労働制を実施するためにはその事業所の従業員の過半数を組織する労働組合(それがなければ過半数から信任された代表)の同意がなければならない。節穴の目しかない労政審委員も大問題だが、裁量労働の同意権、チェック機能を投げ捨てた連合も、問題だらけの「働き方改革」をゴリ押しする安倍首相の共犯者なのではないか、とおれは思う。