戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)パラグアイに負けたのはサッカーだけでない 10/07/17
このところの『赤旗』に最低賃金に関する記事が続けて載っている。「パラグアイ最賃アップ」「生活改善へ 今月から7%」。パラグアイといえば、例のサッカーWカップで日本を破ってベスト8まで進出した国だ。
パラグアイの労働組合は、最低賃金10%引き上げを要求してルゴ政権と交渉。6月下旬からストライキに入った組合も。もし要求に応じないなら7月25日にゼネストを打つぞと圧力をかけた。08年8月に発足したルゴ政権はそれまでの新自由主義政策を国民生活支援に転換。昨年12月には公立医療機関での医療費を完全無料にしている。
労働組合と交渉に当たっていたルゴ政権は、民間部門の月額法定最低賃金を7%アップすると回答。労働組合との間で妥結に至った。これでパラグアイの最低賃金は、月額317ドル(約2万8000円)になるという。ゼネストを構えて最賃引き上げを迫る労働組合も立派だが、それにきちんと応える政府も見上げたものだ。
ところが日本の最低賃金。「最賃が生活保護下回る」「12都道府県で『逆転現象』」(17日付『赤旗』5面)となんとも情けない。08年7月に施行された改正最低賃金法では、「生活保護費を上回る水準」を既定しているにもかかわらず、「経済の先行き不透明感」を理由に引き上げ反対の経営側に押し切られた格好だ。それでもパラグアイのように労働組合がゼネストを打つ気配はない。
「独が介護士に最賃適用」「正規、派遣含む60万人に」(17日付『赤旗』7面)。ドイツでは産業別に法定最賃が決められているが、その範囲が労働組合の要求によって介護士にまで拡大したというわけだ。
あまり知られていないが、60年安保闘争と前後して「一律8000円」の全国最賃制度要求の運動があった。総評は「最賃スト「を打ち、おれも何度かデモや集会に行った。現在も「誰でもどこでも時給1000円」の最賃要求があるが、もう一つ盛り上がりに欠けている。サッカーで日本はパラグアイに負けたが、「最低賃金引き上げ競争」でも遅れをとっている感じだ。