戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

新年や腹立つことの多かりき 18/01/11

明日へのうたより転載

 「日大、大量雇い止め狙う」「無期転換逃れ」「授業削減で学ぶ権利侵害」(10日付『赤旗』)。日大が今年4月1日に発効する改正労働契約法(有期雇用労働者が5年働けば無期契約に転換できる)の適用を逃れるため、非常勤講師の大量雇い止め(解雇)を強行しようとしている。明らかに脱法行為だ。

 安倍首相は年頭の記者会見で、9条改憲と働き方改革に熱意を示した。労働者の働き方が安定し、過労死のない職場が保障されるならそれはいいことだろうが、彼らの考えているのはそんな甘いものではない。過労死ラインを超える残業容認、金銭による解雇野放し、残業代ゼロ、裁量労働制の拡大などなど。

 中には「同一労働同一賃金」なんていう労働運動用語を使った耳触りのいい法案もあるが、同一労働の垣根を高くして結局は差別の合法化を狙うだけ。派遣法も経営者の都合のいいように改悪されて、あらゆる業種で一生派遣の労働者がどんどん増えている。しかも細切れ雇用だから将来の生活設計など立つわけがない。

 おれが特に腹の立つのは残業代ゼロ法案に関連して使われている「高度プロフイッショナル」という言葉だ。働いている人はすべてプロだ。アルバイトやパートでもその働きで賃金を得ている限り間違いなくプロなのだ。政府は高度プロフイッショナルとは例えば「為替ディラ―など年収1075万円以上の専門職」と定義している。為替ディラ―も仕事だろうがビル掃除だって立派な仕事なのだ。

 安倍政権のいう「働き方改革」とは要するに労働者の分断と格差の公認、行き先は労働者の蔑視だとおれは思う。「橋をつくったのはこのおれだ/道路をつくったのもこののおれだ」という歌がある。世の中、働く者がいなくなれば進歩も繁栄もありゃしない。労働者を馬鹿にするってことは人類を馬鹿にするということだ。

 さてそこで大事になるのが労働運動だ。それを担う労働組合だ。しかし労働組合は、昨今ますます影が薄くなっている。昔は春闘だ、賃上げだというと新聞記者は労働組合に取材に行ったものだが、最近は首相の賃上げ発言に殺到する。官製春闘なんて嫌な言葉が定着する。なんとかしてほしい。

 今朝の『赤旗』に「独金属労組 警告スト」「6万人 賃上げ・時短求める」という記事があった。ドイツ最大労組「IGメタル」は6%の賃上げと週28時間制の時短を要求しているそうだ。