戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)中国人実習生の過労死は氷山の一角10/07/05
7月3日付『毎日』1面トップ記事。「中国人実習生『過労死』」「茨城 全国初の労災認定へ」。研修制度で来日した中国人実習生が、茨城県潮来市の金属加工工場で違法な長時間重労働をさせられた末死亡した事件で、鹿嶋労働基準監督署が労災認定の方針を決めた。
財団法人「国際研修協力機構(JITSO)」によると、来日中に死亡した外国人研修生・実習生は08年度に過去最高の34人に達しているそうだ。
おれはこの記事を見て、千葉県木更津市で4年前に起きたある殺人事件を思い出した。以下、首都圏移住労働者ユニオン機関紙「LUM」と「外国人研修生木更津事件を考える会ニュース」をもとに事件の概要を記す。
中国黒龍江省チチハルのコーリャン農家の次男Sさんは、8万元(約120万円)の借金をして日本での「研修」に応募した。木更津の養豚場に配属されたが、当初の説明より賃金が低すぎる。Sさんは、第一次受け入れ機関のK常務理事に対して研修先の変更を申し出た。
ところがこの常務理事は変更を聞き入れないばかりか日本から中国に強制帰国させようと画策。頭にきたSさんは常務理事とその場に居合わせた中国人通訳ら計3人を刃物で刺す。常務理事は死亡し、他の2人は怪我をした。
被害者のK常務理事や通訳の女性は、中国現地の労働者送り出し業務に不正に関与し、多額の金銭を得ていた事実が後に明らかとなる。
Sさんはその場で逮捕され、千葉地裁木更津支部で五回の公判ののち、07年7月に懲役17年の判決を受けた。Sさんと支援者は判決を不服として控訴したが、その年の秋Sさんは支援者や弁護士に相談もせずに控訴を取り下げてしまう。面会した支援者に「すみません」と謝るはかり。彼の腕には鉛筆削りの刃を使って自殺を試みた傷を隠す白い包帯が巻かれてあった。「亡くなったKさんに申し訳ない」と自殺の動機を語ったという。Sさんはいま、栃木県の黒羽刑務所で服役中である。
支援者がSさんの出身地である黒龍江省の農村を訪れると、村の入り口でチンピラ風の男たちに囲まれ「村の中に入るな」「研修生の家族には近づかせない」「逆らったらお前の安全は保証できない」と脅されたという。中国にも日本にも21世紀とは思えないおぞましい光景が現存している。気持ちが塞ぐばかりだ。