戸塚章介 (元東京都労働委員会労働者委員)会社重役と中労委公益委員は両立するのか10/07/01

[明日へのうた]より転載

 6月29日の午前中、明治ホールディング(HD)株式会社の第1回株主総会があった。1年半前明治製菓と明治乳業が合併し、持株会社明治HDが創立され、その初めての株主総会というわけだ。会場も、東陽町の明乳本社会議室から、芝公園の「ザ・プリンス パークタワー東京」のコンペンションホールに格上げとなった。壇上には佐藤社長(製菓)、浅野副社長(乳業)以下重役陣がずらり。その一番左に眼鏡をかけた女性。佐藤社長から社外重役の佐貫葉子氏と紹介された。

  佐貫葉子氏は、明治乳業時代も社外監査役として役員に加わっていた。今度は重役に昇進したことになる。ところで、この女性の名前はどこかで見たことがある。果たして意外なところに名前が載っていた。「第30期中央労働委員会委員名簿」である。大企業の役員だから当然使用者委員だと思うだろうが、これが驚き、なんと公益委員なのである。

  労働委員会の公益委員は「公益」を代表するから公益委員なのである。企業側を代表するのは使用者委員、労働側を代表するのは労働者委員というわけで、これは労働委員会制度の「イロハ」の「イ」だ。佐貫葉子氏は本業が弁護士だというから労組法に無知なわけはないだろう。すべて承知の上で大企業の重役と中労委公益委員を引き受けたとしたら、おれなんかに理解できない何か特別な考えがあってのことなのだろうか。

  しかも、明治乳業、明治製菓は労働者を大事にする行儀のいい会社とはとうてい言いかねる。長い間労働争議が絶えない企業なのである。現に明乳では死者も含め64人もの労働者がいまだに不当労働行為を訴えて係争中なのだ。いま都労委で審査している「明乳全国事件」(申立人32人)がもし命令ということになると、いずれ中労委に再審申立される。そのときに、命令の決定権を有する公益委員に会社役員がいるというのでは、中労委の権威も中立性もあったものではない。

  佐貫葉子さん、あなたは株主総会で、この会社の中にいまだに解決しない労働争議が存在することをしかとその目でご覧になったかと思う。次の会社役員会で、争議の解決を提案するというなら別だが、それができないなら、明治HDの役員か、中労委公益委員かどちらかの選択を決断すべきだ。日本の労働委員会制度はあなたが考えているほどいい加減なものではない。