戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

ミサイル対応、ちょっと過剰過ぎるのでは 17/08/31

明日へのうたより転載

 おれは若い頃から朝のテレビニュースはNHKを見ることにしている。いろいろ問題はあるが、コマーシャルがないのとそれから長年の習慣だ。29日朝7時過ぎに起きたら女房がテレビを見ていて「こればっかりよ」と言う。北朝鮮のミサイル発射のニュースが繰り返し放送されていた。ずっとそのニュースばかりで、楽しみにしている朝ドラの「ひよっこ」も中止になってしまった。

 30日付『毎日』も「ミサイル」一色。「ミサイル複数弾頭か」「北朝鮮発射 日本通過」「襟裳岬東方 事前通告なし」「列島越え5度目」「トランプ大統領『国連など侮辱』北朝鮮を非難」(1面)。「ミサイル迎撃に課題」「射程5000キロ『火星12』か」「新技術実験の見方『無駄撃ち』狙う」「列島防衛難しく」(2面)。「北朝鮮 方向変え威嚇」「『グアムも照準』誇示」「米、戦略立て直し急務」(3面)。

 「韓国対応に苦慮」「文大統領『強く糾弾』」「対話の実現性低く」(9面)。「国、屋内退避を奨励」「現実的な備えを」「『地下ない』『カラの浴槽入れ』困惑ツィート飛び交う」(第2社会面)。「どこに逃げれば」「戸惑う市民、自治体」「12道府県 休校相次ぐ」(社会面)。

 ミサイルは29日午前5時58分頃発射され、約14分後に太平洋上に落下したものとみられる。NHKニュースでは襟裳岬東方と繰り返していたので、日本列島の目と鼻の先に落ちたのかと思ったら、1180キロも離れた公海上だった。過剰反応ではないか。第一ミサイルが落ちてから休校する理由がどこにあるのか。また発射するかも知れないというのならずっと休校していなければならなくなる。

 NHKニュースに警戒のサイレンが鳴って不安そうに空を見上げる市民の顔が出ていた。まるで戦時中の空襲警報である。東北新幹線や仙台発の上り列車が「安全確認」のため急停車。「電車の中でどうしろというのか」と乗客は戸惑うだけ。過剰警戒で国民は大迷惑だ。逆に、がぜん元気になって飛びまわっているのが安倍首相。あちこちの国の首脳に電話をかけまくって危機感を煽りたてている。

 確かに北朝鮮のミサイルも誉められた話ではないが、何千キロと離れた他人(ひと)の国の鼻っ先で軍事演習をやらかすアメリカにも文句を言うべきではないか。アメリカ発の北朝鮮情報を垂れ流すだけのメディアでいいのか。30日付『毎日』は社説で「日本主導で5カ国協議を」と提唱、アメリカに朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に格上げすることを求めている。そういうことなら日本も北朝鮮との間で戦後処理が終わっていない。そこがきちんとされなければ「日本主導」などあり得ないと思うのだが。