戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

労働運動見直しの時期なのだろうか 17/08/28

明日へのうたより転載

 総評が生まれたのは1950年でなくなったのは90年、40年の生涯だった。総評はよく「にわとりがアヒルになった」といわれる。つまり誕生当初はレッドパージにも人員整理にも「ケッコー、ケッコー、コケコッコー」と賛成していたのが、そのうち単独講和反対、勤評反対と「ガ―ガ―」文句を言い出した。60年安保、沖縄返還、日韓会談反対、みのべ都知事実現などのたたかいの先頭に立った。

 もちろんいいことばかりでなく、社会党一党支持や反共路線といった後ろ向きの方針も根強く引きずっていた。結局それが災いして総評解体、連合結成という事態になってしまった。総評の積極面を引き継いだ全労連だが民間主要組合への影響力を失い、ストも打てなくなった。残念だがどうしようもない。

 総評会館は連合会館になった。その連合会館の前に7月のある日、「連合は勝手に労働者を代表するな!」というプラカードを持って労働者が集まった。例の「残業代ゼロ法案」を連合幹部が呑むと決めた時だ。この抗議行動について、連合加盟の全国ユニオンの鴨桃代顧問は心から同意する。

 「連合が最大のナショナルセンターといっても、そもそも労組の組織率が17%くらいしかないのに、なぜ連合の、それも一部の幹部がすべての労働者代表であるかのように、労働者全体に影響の及ぶ法律を勝手に決めるのか。怒りをぷつけたいはよくわかります」(8月25日付『週刊金曜日』から)。

 結局連合は「残業代ゼロ法案」の修正・是認方針を撤回し、反対することに戻した。内部的には、政権とつるんで労基法改悪を謀った次期会長候補の逢坂直人事務局長が失脚する羽目になった。しかしこの間の右往左往ぶりはいかにもみっともなく、政府と財界から足元を見られて揺さぶりをかけられることは必至だろう。

 いま労働組合に求められているのは何だろう。前記『週刊金曜日』で雨宮処凛さんは「エキタス」のような組織が運動の方向性を示していると主張する。「『悲壮感を出さない』という彼らの運動はいつもスタイリッシュでカッコいい」「最低賃金を上げろ。この要求は、あらゆる対立を超える」。

 おれみたいに総評労働運動の中で半生を過ごしてきた人間には、エキタス的運動だけでは権力や資本から大幅な譲歩を引き出すのは無理だという思いがある。もう一度労働運動を根底から考え直す時期に来ていることだけは確かだが。