水久保文明(JCJ会員 千代田区労協事務局長 元毎日新聞労組書記)

「ヘボやんの独り言」より転載 

捏造したのは逆だった-植村名誉棄損裁判傍聴記③止    18/03/28

 これを週刊新潮風に見出しを立てるとすると、主見出しは「捏造と指摘したそれが捏造だった」。脇見出しは「裏取りもせず、捏造呼ばわり その責任をどうするのか櫻井よしこ氏」。ということになろう。勝負あった、である。

 櫻井よしこ氏が法廷で発した最後の一言もまた印象に残った。「朝日(新聞)が書いたものはウソだ。私は間違っていたら反省する。朝日も反省してほしい」――という一言が。私は法廷で声を出すわけにはいかず、心の中で爆笑した。

朝日新聞はこの問題の検証で、吉田清治発言の記事をすべて撤回することを表明し、合わせて植村記者の記事に間違いはなかったことを表明している。櫻井氏の最後のこの一言は、私には犬の遠吠えにしか聞こえなかった。

 それではこの項の最初に指摘した「為にする」その下心はなんだったのか、考えてみたい。ズバリ、南京大虐殺はなかった、従軍慰安婦はなかったという歴史改ざんの押しつけだった、と言えよう。その恰好の〝餌食〟として植村さんの記事を持ち出してきたのである。

 なぜ植村さんだったのか、それは次のステップのために朝日新聞社を退職することが決まっていたからと考えられる。「言論は言論で応えるべき」と櫻井氏は主張した。が、言論の場を去った植村さんにはその〝力〟が及ぶはずがない。あるとすれば、方法は市民的言論、すなわち訴訟しか術は残っていなかったのだ。

 もう一点、強調しておきたいことがある。「思い込み」の恐ろしさについてだ。櫻井氏は歴史修正を主張する〝お友達〟の論文だけを頼って、植村さんの書いたものを「捏造」と批判した。法廷でその出典が間違いだったことを素直に認めたが、ジャーナリストとしては失格に値する。

 その誤った思い込みがネトウヨを興奮・増長させ、北星学園や朝日新聞退職後に予定していた職場、そして家族に理不尽な脅迫を行ったのである。これは見方を変えると「そそのかし」と言えないか。誤った情報にそそのかされたネトウヨもネトウヨだが、誤った情報を提供した方はもっと悪い。裏の取れていない事柄は、思い込みだけで報道してはいけないことをこの事件は教えてくれている。

 それにつけても、家族を守るために、言論の自由を守るために立ち上がった植村隆さんに改めて敬意を表したい。そして、このたたかいは断じて負けられない戦いとしてさらなる支援を強めたいものである。

※詳細は「植村裁判を支える市民の会」ホームページを参照
http://sasaerukai.blogspot.jp/

★脈絡のないきょうの一行
佐川証人「刑事訴追の恐れがありお答えできない」。その「訴追される恐れ」の内容を知りたいねー。


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