水久保文明(JCJ会員 千代田区労協事務局長 元毎日新聞労組書記)

「ヘボやんの独り言」より転載 

捏造したのは逆だった-植村名誉棄損裁判傍聴記②    18/03/27

 15分の休憩のあと、次の証人・櫻井よしこ氏の尋問が始まった。

 主尋問のなかでも、吉田清治という名前が何回か出てきた。櫻井氏は植村さんが書いた記事の中の、「売春行為を強いられた」という部分について「これは吉田清治氏の発言をもとにしている。暴力的に連れて行ったということも吉田氏も書いており、女子挺身隊はそんなことはなかった」と主張。

 さらに、(私は笑ったが)従軍慰安婦に関する報道は朝日新聞が多かったことを力説。「朝日がこの問題の(新聞全体の)報道の4分の3を占めたことがある。90年は77%だった。その後は各新聞も書くようになり減っていった」と。そこには〝朝日憎し〟が漂っているだけだったと言っても過言ではない。

 反対尋問は厳しく行われた。植村さんの記事を「捏造」と批判した根拠について、逐一、問い詰めていった。その中心となったのは元従軍慰安婦の金学順(キム・ハクスン)さんらが日本政府に対して謝罪と損害賠償補求めた裁判だった。

 櫻井氏らは、金さんがその訴状で「養父から40円で売られた」と述べており、売られたということは人身売買であり、強制的に慰安婦にされたものではない、と主張したのだ。そのうえに立って、「植村さんは金さんらが慰安婦にされたと捏造した」という論理を飛躍させたのである。

 この点について反対尋問は、訴状に「40円で売られた」という記述がないことを櫻井氏に確認させたうえで、週刊誌やテレビでそのことを主張している事実について書証をもとに指摘、ついに「出典が間違っていた」と櫻井氏は言わざるを得なかった。間違っていた問題については、訂正することを法廷で約束した。監視が必要である。

 この裁判が始まった直後、植村さんは私に「櫻井さんは金さんの訴状を読んでいない可能性がありますよ」と語ったことがある。この証人尋問はまさにそのことを証明したことになる。ということは、賢明なみなさんにはもうお分かりだろう。「捏造だ」と主張したその人が、実は捏造していたことになるのである。

(次回につづく)

★脈絡のないきょうの一行
始まった佐川喚問。日本の民主主義のカナエの軽重が問われる。いま、歴史が軋んでいる。


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